「役不足」と「力不足」の違い
ビジネスシーンで上司から「君に今度うちの部で扱う企画のリーダーになってもらいたい」というような、大きな仕事を頼まれたとき、「非常に光栄ですが、私にとってそのような仕事は役不足なので大変不安です」というように受け答えをしている人がいます。これってどこか違和感ありませんか。「役不足」とは、何か業務や課題を与えられたとき、自分の能力では簡単にクリアできるときに使う言葉です。
もし「私には役不足なので辞退させていただきます」なんて答えたら、「私はこんなカンタンな仕事なんかしたくないので辞退します」という意味になってしまうのです。本人は謙遜の意味を込めて言ったつもりが、実は反対の意味として相手に伝わってしまうのです。本人が仕事に対して不安があるようなときには「力不足」という言葉を使います。ですから「私には力不足なので辞退させていただきます」という言い方が適切なのです。
上司が「君にとっては役不足かもしれんがよろしく頼む」というような言い回しでしたら、「君にとってはカンタンな仕事かもしれないがよろしく頼む」という意味になるので誤用ではありません。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 大人のための日本語と漢字』
監修:山口謠司
「ニッポンとニホン使い分けは?」、「なぜ緑色なのに青信号?」「十二支の本当の意味とは?」、「間違って使うと恥ずかしい敬語は?」日本語と漢字にまつわる、とことん面白くてためになる話。単なるうんちくにとどまらない、使える日本語、生きた日本語から、日本人が覚えておきたいしきたりや文化、マナーまで幅広く紹介。図解でよりイメージができ、面白いほどかんたんに、日本語の興味深い「なぜ」と、正しい日本語の知識が増える1冊!
公開日:2021.07.26