トレーニングは信頼できる「他者の目」が大切! プロ野球選手の効果的な自主トレとは? 巨人、高梨雄平投手の連載日記【ナシさんのアリな話 鉄腕奪取】第11回!

第11回 キャンプに向けた自主トレで、プロは何をするのか?

ラブすぽ読者のみなさん、遅ればせながらあけましておめでとうございます!本年も応援、宜しくお願いします。

2月に入り、プロ野球もキャンプイン。少しずつ、「シーズン開幕」の足音も聞こえてきましたが、僕がこれを書いているのはぶっちゃけ、まだキャンプイン前の1月です。なので今回は、プロ野球選手として、キャンプに向けてどういうトレーニングをしたのか、そのうえで、なにを意識しているのかを少し書きたいと思います。

高梨雄平

僕は例年、オフシーズンは都内近郊で自主トレを行っているんですけど、このオフは宮古島に12月と年明けの2回ほど足を運びました。トレーニングをする上で「ここは良さそうだぞ」という場所を見つけたんです。

間隔を少し空けて2回行ったのには、もちろん理由があります。それが「他者の目」です。自主トレとは、その名の通り「自主的にトレーニングする」期間。当然、こなすメニューや練習するタイミングなど、決定権は自分にあります(もちろん、いろいろな人からのアドバイスや指導を受けることもあります)。ただ自分ひとりでトレーニングをしていると、間違った方向に進んでしまうリスクがあります。自分では「これでいい」と思っていても、実はそうじゃない……野球やトレーニングに限らず、絶対にありますよね。仕事のやり方、勉強法なども「独学」にはいいこともあれば悪いこともある。だから、定期的に「他者の目」を入れて自分の感覚と第三者から見た感覚にズレがないか、確認する必要があるんです。年明け、2回目に宮古島を訪れたのは、それが目的でした。

ただ、実はこれにも落とし穴があります。それが、「他者の目」が本当に信頼できるモノなのか、ということ。もし、自分の感覚は正しかったのに、「他者の目」が間違っていたら……逆に違う方向に進んでしまう可能性もある。その判断は正直言ってプレイヤー側の感性に委ねられている部分があります。「この人は本当に信頼できる目を持っているのか」を、プレイヤーも見極めなければいけない。

高梨雄平

現在の野球界にはいろいろな情報が溢れ返っていて、変な話、誰でも知識を頭に入れることはできる。そうすると、どんな人でも「それっぽいこと」は言えるんです。もちろん、指導する側にも同じことが言えます。お互いに「この人の言っていることはどのレベルなのか」を見極める必要がある。たとえば同じことを言うにしても、小学生レベルまで落として会話をしなければ伝わらないのか、自分の感覚をそのまま言語化してもしっかり伝わるのか。それだけでも全然違いますよね。

今の時代は、プロ野球選手にもそういう感性が必要になっていると感じます。ありがたいことに、僕の周りには僕の感覚をレベルを落とさずに伝えることができる人たちが揃っているので、ストレスなくトレーニングをすることができています。ただそれも、実際に会ったり、話をすることで「この人なら」という人を見つけてきた結果。僕自身、これまで「あれ?この人はちょっと違うな……」と思った人もいます。それこそ「それっぽいこと」言っているんだけど、相互理解は全然深まらない。もちろん、その人が「ダメ」というよりは、僕には合わなかったというだけなので、もしかしたら他の選手で「合う」ケースもあるかもしれません。そういう意味でも正解がないから、むずかしい。

だからこそ、プロ野球選手としてどれだけ信頼できる「他者の目」を周囲に置けるかは、現代のプロ野球選手にとって必要不可欠なことなんです。

そのうえで、オフシーズンだからこそできるテーマを持ってトレーニングすることも重要です。僕の場合は毎年、少しずつテーマが変わるんですけど、たとえば昨シーズンで言えば体を大きくしました。ボールに対してより圧力を伝えられるフォームに変えて、出力を上げようと試た。ただ、結果的にそれは全然ダメでした(笑)。僕には合わなくて、最終的にはそれまで取り組んでいたことを「全替え」。ただそれも、傍から見たら失敗かもしれないけど、「これはやっちゃダメなんだ」という経験を得ることができたという意味ではプラスですよね。トライ&エラーはシーズン中でもちょこちょこやるんですけど、「大きく変えて」「大きく戻す」みたいなことは、やはり時間のあるオフシーズンのほうがやりやすい。この時期だからこそ、めいっぱい舵を切って何かを「変える」=リスクをはらんだトライができる。

高梨雄平

ちなみに今年のオフは、昨年のように体を大きくすることはせず、体の使い方や地面の力を利用するとか、そういう方法で出力を上げることをイメージして取り組んでいました。ちょっと、文字で説明するのはむずかしいんですけど……(苦笑)。古武術などがイメージに近いかもしれないですね。たとえば同じ重量を挙げるにしても、これまでよりも「頑張らない」で挙げられるようになる。今年は純粋なアスリートとしての能力、強さを上げることをテーマに掲げています。

もちろん、その取り組みが今後どういう結果につながるかはキャンプやその先の実戦を見ないとわからない部分ではあります。もしかしたら、昨年同様どっかで「全替え」するかもしれない(笑)。でも、そうやって自分の体を使って「実験」を続けることは、プロ野球選手としては絶対にプラスになるはずです。

ファンのみなさんも、今シーズンの高梨雄平がどんな変化を見せるのか、ぜひお楽しみに!(笑)

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