不安なく働くために訪問看護で働く前に知っておきたい「10のこと」【訪問看護のアイデア帖】

【訪問看護の働き方】訪問看護で働く前に知っておきたいこと

ここでは、訪問看護ならではの働く場所や情報収集の方法など、知っておきたいポイントをまとめました。

在宅看護での環境

療養者の住まいである一般の家庭で、限られた設備や環境下で看護を行います。気温の調整やスペースの確保や、清潔を維持するのが困難な場合もあります。病棟のように検査設備も整っていないため、気になることが出てきても、すぐに採血やレントゲンなどの検査を行ったり、医師に判断を仰ぐことは基本的には難しい環境です。まずは、療養者のご自宅で限られた資源を使ってできる安全なケアを提供する方法を考えましょう。生活環境(エアコンがない、お風呂が寒いなど)をよく観察し、その環境がケアにどう影響するか、改善は可能かを考えましょう。

在宅看護でのアセスメント

療養者がひとり暮らしであったり、家族がいても上手く病状を説明できなかったりすると、十分な情報が得られないこともあります。限られた情報の中で、療養者の身体的・精神的・生活面などの状況、家族背景、社会資源の活用状況などから想像を膨らませ、総合的にアセスメントする必要があります。

また、本人が困っていることがあっても、言葉で伝えられるとは限らないため、療養者や家族の言葉だけではなく、表情、態度、生活空間から情報を得る力を磨きましょう。

在宅看護での看護技術

在宅看護では、褥瘡のケアや更衣など、頻出の看護技術もあります。よくやることの効率よくできるやり方を見つけておくと、日々の看護がスムーズになり、空いた時間を他のケアに充てられることもあるでしょう。

そして、とにかく病棟のようにはいかないのが訪問看護です。療養者の自宅に合わせた工夫や手順を身に付けましょう。例えば、一般家庭で100%の滅菌操作は難しいため、全体ではなく一部分だけでも清潔な環境を確保するなど、「なるべく清潔」「できる範囲で」といった、実現可能なラインを決めるとよいでしょう。

コミュニケーション

療養者や家族との信頼関係を築くには、傾聴力や共感力が問われます。療養者のご自宅はパーソナルスペースであり、訪問看護師の受け入れ方も人それぞれです。まずは丁寧な言葉遣いで、一気に距離感を詰めずに、様子を見ながら関係を構築していきましょう。

看護記録

記録としては、特別、医療と介護での違いはないように思えます。診療報酬の観点で、取得できる加算の違いはありますが、記録においては、特に医療と介護での違いを意識したことはありません。

訪問看護の記録は、利用者さんの生活の場での状況や変化、提供したケアの内容と結果を多職種連携のため正確に伝えるという重要な役割があります。特に、利用者さんの主観的な訴え(S)や 客観的な観察(O)に基づき、専門的な視点から問題点や今後の計画を記載するSOAP形式などの活用は、継続的なケアの質を保証するために欠かせません。訪問ごとの状況を訪問看護記録書Ⅱに具体的に残すことが義務付けられています。

訪問看護指示書とは

訪問看護師は、主治医の指示の下に訪問しています。必ず、主治医から訪問看護指示書を交付してもらう必要があります。主治医の指示がなければ、どんなに訪問看護を希望されても、訪問することはできません。

訪問看護師は、訪問看護指示書を発行してくれた医療機関に、訪問看護計画書と訪問看護報告書を提出する必要があります。訪問看護指示書は全部で5種類あります。全療養者に発行される指示書は訪問看護指示書または精神科訪問看護指示書で、その他の指示書は状況に応じて発行されます。

【訪問看護指示書の種類】

気管カニューレを使用しているか、真皮を超える褥瘡のある方に対しては月2回まで交付可能

医療保険と介護保険がある

訪問看護を受ける人が使える保険には、医療保険と介護保険があります。基本的には介護保険のサービスが優先されます。サービスを受ける人の年齢や病名などにより使える保険が決まります。訪問看護師は、どちらの保険でサービスを提供するかを理解し、説明できるようにしておく必要があります。

【保険の適用条件】

ICT の活用

現代の訪問看護において、ICT(情報通信技術)の活用はもはや不可欠です。記録業務の効率化だけでなく、多職種連携や情報共有の迅速化にも活用されています。訪問看護師の業務負担を軽減し、より質の高いケアを提供するための強力なツールとして積極的に活用し、自身のスキルアップと療養者へのよりよいケアにつなげていきましょう。

1.電子カルテ・訪問看護記録システム

多くの訪問看護ステーションで、紙媒体の記録から電子カルテや訪問看護記録システムへの移行が進んでいます。

メリット

記録の効率化
訪問先でタブレットやスマートフォンを使って直接入力できるため、 ステーションに戻ってからの転記作業が不要になり、 時間の節約になります。音声入力機能などを活用すれば、さらに効率アップも可能です

情報共有の迅速化
記録がリアルタイムで共有されるため、 他の看護師や管理者がすぐに療養者の最新情報を確認できます。緊急時やオンコール対応時にも、 過去の記録や現在の状況を素早く把握できるため、適切な判断につながります

検索・集計の容易さ
特定の情報を検索したり、 訪問回数やケア内容などのデータを集計したりすることが容易になります。これにより、業務改善や統計分析にも役立ちます

誤字脱字の削減と可読性の向上
手書きに比べて誤字脱字が減り、誰が読んでも分かりやすい記録になります

セキュリティーの強化
パスワード管理やアクセス制限により、 紙媒体よりも情報漏洩のリスクを低減できます

デメリット

【初期導入コストと学習期間】
システム導入には費用がかかり、スタッフが操作に慣れるまでの学習期間が必要です

【バッテリー切れ・通信環境】
訪問先でのバッテリー切れや、 電波状況が悪い場所では記録ができないといった問題も考慮する必要があります。モバイルバッテリーの携帯や、 オフライン入力が可能なシステムの選択も要検討です

【情報入力の正確性】
効率化を重視するあまり、情報入力が簡略化され過ぎたり、正確性が損なわれたりしないよう注意が必要です

2.多職種連携ツール

療養者を支えるのは、訪問看護師だけではありません。医師、ケアマネジャー、薬剤師、理学療法士、ヘルパーなど、さまざまな職種が連携してケアを提供しています。ICTは、この多職種連携を円滑にする上で非常に有効です。

情報共有プラットフォーム

チャットツールや情報共有システムを用いて、療養者の状態変化やケア内容について、関係職種間でリアルタイムに情報共有を行います。これにより、電話やFAXでのやり取りに比べて、迅速かつ正確な情報伝達が可能になります。例えば、療養者の急変時や、新たな指示が出た場合など、関係者全員に一斉に情報が共有されることで、対応の遅れを防ぐことができます。

オンラインカンファレンス

kypeやZoomなどのビデオ会議システムを利用して、オンラインで多職種カンファレンスを行うステーションも増えています。これにより、関係者が一堂に会することが難しい場合でも、顔を見ながら密な情報交換ができます。移動時間の削減にもつながり、効率的な連携が可能になります。

3.その他

タブレット端末・スマートフォン

訪問先での記録入力はもちろん、療養者の情報閲覧、地図アプリでの経路確認、緊急時の連絡などに活用されます。

ウェアラブルデバイス

療養者のバイタルサインを継続的にモニタリングできるウェアラブルデバイスを導入し、異常の早期発見に役立てるケースもあります。

オンライン研修・学習ツール

訪問看護の専門知識や技術を学ぶためのオンライン研修やeラーニングツールを活用し、自己学習やスキルアップにつなげることができます。

業務中の移動

訪問看護師にとって、療養者宅への移動は日々の業務の大部分を占めます。移動手段はステーションの場所や訪問エリア、個人の希望によってさまざまです。

主な移動手段と特徴

訪問看護師がステーションと療養者宅の間、療養者宅から別の療養者宅の間などを移動する時は、次のような手段を使います。

訪問看護師の 1 日のスケジュール例

訪問看護ステーションでの1日、そして1 ヵ月は、療養者の状態や緊急度、そして事業所の体制によってさまざまです。ここでは一般的な流れをご紹介します。

訪問看護師の1日は、療養者宅への訪問がメインですが、それ以外にも多岐にわたる業務があります。直行直帰のステーションでは、自宅から直接訪問に向かい、訪問が終了次第、そのまま帰宅する場合もあります。

【出典】『看護技術の「不安」が「自信」に変わる!現場で役立つ!訪問看護のアイデア帖』著:星の砂

【書誌情報】
『看護技術の「不安」が「自信」に変わる!現場で役立つ!訪問看護のアイデア帖』
著:星の砂/監修:伊藤大介


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