忙しい医師にどう伝える? 求める情報を的確に伝える報告方法「SBAR」とは【訪問看護のアイデア帖】

他職種・多職種との連携「医師との連携」
訪問看護師にとって医師との連携は、療養者の生命と生活を守る上で最も重要かつデリケートな課題の一つです。報告や相談の際に「あしらわれた」「怒られた」といった経験から、萎縮してしまう看護師も少なくありません。しかし、適切なタイミングと方法で情報を伝え、医師の指示や判断を引き出すことは、看護師の重要な役割です。
医師が求める情報を的確に伝える「SBAR」
SBAR(エスバー)は、医療現場で効果的なコミュニケーションを図るための報告フレームワークです。簡潔かつ網羅的に情報を伝え、医師の迅速な判断を促します。報告する前に、伝えたい内容をS→B→A→Rの順で整理し、メモを取ります。それから、要点を絞り、だらだらと話さず簡潔に伝えます。医師が忙しい可能性も考慮し、手短に伝えられるよう準備しましょう。
S(situation:状況)今、何が起きているのか? 最も伝えたい緊急性の高い事柄は何か?
● 最初に結論や要点を伝えることで、医師の注意を引きます
例:「〇〇様が本日〇時頃から急に発熱し、呼吸が苦しそうにされています」
B(background:背景)その状況に至るまでの療養者の背景や経緯は?
● 医師が必要とする最低限の関連情報を伝えます。不要な情報は省きましょう
例:「〇〇様は〇歳の男性で、〇〇の疾患で在宅療養中です。普段の体温は〇℃台で、 呼吸状態は安定していました。昨晩から食欲がなく、今朝は痰絡みの咳がありました」
A(assessment:アセスメント・評価)看護師として、状況をどのように判断・解釈しているか?
● 客観的な事実に基づき、看護師の専門的視点からの評価を伝えます。診断ではなく、あくまで推測や判断です
例:「体温は〇℃、SpO2 は〇%、呼吸数○回で努力様呼吸がみられ、肺炎の悪化や急性増悪の可能性があると考えられます」
R(recommendation:提言・提案)医師に何をしてもらいたいか? どうしてほしいか?具体的な提案は?
● 具体的な行動を促すことで、 医師の指示を促します。選択肢を提示することも有効です
例:「往診をお願いできますでしょうか。あるいは、指示いただければ、 〇〇(医療処置や薬剤使用)を実施したいと思いますが、 いかがでしょうか」
医師の忙しさを踏まえた報告・相談手段
医師は外来、往診、手術、会議など多忙を極めています。状況や内容に応じて適切な報告手段を選択することが、スムーズな連携には不可欠です。
電話(緊急・準緊急時)
● 即時性が高く、直接会話できます
● 緊急性の高い状況(急な容体悪化、意識レベルの変化、重篤な症状の出現など、早急な指示や判断が必要な場合)に用います
● SBARを準備し、簡潔に状況を伝えることを徹底します
●「今、 お話しするお時間はございますか?」と冒頭で尋ねる配慮も有効です
● 医師がすぐに電話に出られないことも考慮し、留守電や別連絡先も確認しておきましょう(医療機関の看護師に伝えることも多いです)
FAX、毎月の報告書など(非緊急・情報共有)
● 記録に残る、時間を問わず送れる、視覚情報(検査値など)を共有しやすいという特徴があります
● 状態の安定している療養者の定期的報告(訪問看護計画書・報告書、褥瘡の状態、排泄状況などの定型的な報告)に用います
● 非緊急の相談(処方内容の微調整、訪問スケジュール調整など、即時性が求められない内容)に用います
● 医師がいつ確認できるか不明なため、緊急性の高い内容は避けましょう(確認したかのフィードバック方法も事前に確認しておきましょう)
医療者専用のSNS・チャットツール(情報共有・簡易相談)
● 手軽に情報共有ができ、グループでの連携も可能です
● 簡易な情報共有(「本日〇〇様訪問しました。変わりありませんでした」といった安否報告)に用います
● 写真共有(褥瘡の経過、貼付剤の状況など)に用います
● 非緊急の簡易な相談(「〇〇の薬剤について確認したいのですが」 など)に用います
● 個人情報保護に配慮したセキュリティー対策がされたツールを使用します
● 緊急連絡手段としては不適切です
直接会って報告・相談(往診時・カンファレンス時など)
● ニュアンスが伝わりやすく、質問や追加情報をその場で確認できます
● 往診同行時:医師が療養者を診察している際に、具体的な身体所見や生活状況を補足説明します
● カンファレンス:多職種がいる場で、全体的な視点から情報共有や意見交換を行います
● 複雑な相談:電話や文書では伝わりにくい、デリケートな内容や多岐にわたる相談を行います
● 医師の時間の都合を考慮し、要点をまとめてから話しましょう
医師とのスムーズな連絡のためのポイント
医師との連携は、訪問看護の質を左右する要です。これらのポイントを意識することで、より効果的で円滑なコミュニケーションを図り、療養者への最適なケア提供につなげることができるでしょう。
敬意と感謝
医師は療養者の命に関わる責任を負っています。多忙な中でも対応してくれていることへの敬意と感謝の気持ちを忘れずに伝えます。
明確な目的
何を報告したいのか、何を解決したいのか、目的を明確にしてから連絡します。
客観的な情報
症状、バイタルサイン、療養者の言動など、主観を交えず客観的な事実を伝えます。
記録の徹底
医師への報告日時、内容、医師からの指示、それに対する看護師の対応を必ず記録に残します。
関係性の構築
日頃から良好な人間関係を築く努力も大切です。ささいな情報交換やあいさつなどの積み重ねが信頼関係につながります。初めて関わる医師であれば、事前にあいさつに伺い、顔合わせをしておくと連携しやすくなります。
報・連・相の徹底
報告(事実を伝える)、連絡(簡単な情報を伝える)、相談(意見を聞く、助言を求める)を使い分け、状況に応じたコミュニケーションを心がけます。
【出典】『看護技術の「不安」が「自信」に変わる!現場で役立つ!訪問看護のアイデア帖』著:星の砂
【書誌情報】
『看護技術の「不安」が「自信」に変わる!現場で役立つ!訪問看護のアイデア帖』
著:星の砂/監修:伊藤大介
知っていれば看護にもっと自信がつき、毎日の看護がもっと快適になる「看護ハック」を集めました。
個人のご自宅に訪問し、1人で対応することの多い訪問看護の現場の悩みを解消します。
目からウロコのテープ技術、在宅環境で使える道具や代替品紹介などの実用的な情報から他職種との連携のコツ、訪問看護師の働き方のリアルまで看護の現場で頻繁に遭遇するけれど教科書には載っていない超実用的な訪問看護のコツと知恵を紹介します。
著者の星の砂さんは、自身が訪問看護師。Instagramフォロワー10万人。看護技術の「不安」が「自信」につながる情報を紹介しています。教科書では学べない看護現場で役立つスキルを中心に発信中で、子育て中のママナース。
明日からすぐに使える「看護ハック」は看護が快適になり、自信を持ってケアができるようになるテクニックばかりです。
すでに訪問看護師として働かれているかたはもちろんこれから訪問看護師と働くことをご検討中のかたにもおすすめしたいかゆいところに手が届く一冊です。
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