『伝授』第20回 休み明けの馬について伝授

 休み明けの馬に関して、読者の皆さんは取捨に迷うかもしれない。今回は休養明け初戦の馬と、一叩きした馬の差について俺の考えを伝授しようと思う。

・昔と今では牧場設備が良くなって調整過程に違いがでてきている

 最近は休み明けからしっかり乗り込んで仕上げてくることが多いが、昔は違った。今と違ってキッチリ仕上げる施設が放牧先になかったから、休んでたくさん食べて体が緩んで、戻ってきたら50キロ増えていたというようなことが多々あった。だから、「今回さすがに太くていらないよ」と思うような馬がたくさんいた。
 そういう状況だったので、当時は一度使った方が良いというケースはたくさんあったし、一度じゃ足りなくて2〜3回使ってやっと良くなることも少なくなかった。

 競馬関係者の努力のおかけで今は牧場にも良い施設がたくさんあるから、そこで稽古をして8〜9割仕上げられる。なので、トレセンに戻ってきてからは最終的な仕上げだけでレースに出走することができる。だから、休み明けでも仕上がっていることが多くなったのが今日の競馬だ。

2025年の秋華賞はオークス大敗からのエンブロイダリーが休み明けで勝利

どこの牧場で休養するかが大きく影響する

 以前と比べてだいぶ放牧先の設備は良くなったけど、それでも預ける牧場によって差はある。ノーザンや社台はやっぱりすごいよ。世界一と言う人もいるしな。
 一方で、慢性的に人手が足りていないから近所の農家の人が空いた時間で手伝っているような個人経営の牧場もある。馬は手をかけてもらえず何もしていないとボーっとしてくるから厩舎に戻ってきた時に仕上がりに手間取ることになる。
 どこの牧場で生まれるか、どこの牧場に預けられるかで馬の将来は全然違うと俺は思う。英才教育を受けているか、そうじゃないかは持って生まれた血よりむしろ影響が大きいんじゃないか?

 牧場は馬を預かって壊さないというのは第一前提。そのなかで大きい牧場だと馬が壊れても、預けている側が「大きいレースを勝つために強いトレーニングをさせたのだろうから仕方ないね」で納得するケースが多いけど、小さいところは馬主さんに「何やっているんだ、金返せ」と言われかねないから、あまりビシビシ攻められないという実情もある。

一叩きすることで心肺機能が高まる

 設備が揃った牧場が増えた今でも、レースを一度使うことと、強い調教をすることはイコールではないと言われている。実際に3頭併せ一杯で追い切ったとしても、実戦と比べたら間違いなく軽い。ただ、具体的にどのくらいの差があるのかはわからない。
 
 休み明けを一回使ったことで、大きく変わることが多いのは心肺機能。これは実戦を使ったことで変わってくる馬が結構いる。獣医師に診てもらって、休み明けよりも1度レースを使って心音が良くなっているという話をよく聞く。
 
 逆に「レース勘」「気合い」といった目に見えないものは、一叩きしたことで良くなっているかどうかなんてわからない。俺は人間が勝手にそう思いたい願望を感じるけどな。
 ちなみに、パドック解説をしている記者が「一叩きして良くなっている」と言うのは、その解説者の感覚的な問題だし、本人がそう思って言っているのだから全く問題ない。それで好走するケースもあるし、そうでないときもある。テレビのパドック解説者を信じるか信じないか、それは皆さんの自由だ。

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