『伝授』第23回 パドック解説者が言うフレーズの受け取り方を伝授

 読者の皆さんは、テレビのパドック解説者が使う表現で「どういう意図なの?」と疑問に思うフレーズがあるだろう。
 今回は、そういったパドック解説でよく使われる言い回しについて、俺なりの意見を述べたい。

「踏み込みが良い」は、その馬が持っている歩き方の特徴なだけ

 「踏み込みが強くて良いですね」という表現をよく耳にすることがあると思うけど、踏み込みが深いというのはその馬の形なだけ。だから、そういう馬はいつも踏み込みが深い。踏み込める馬は見た目がかっこいいから褒めたくなるのはわかるけど、競走能力とリンクするとは限らない。
 
 もし、いつも踏み込めている馬が踏み込めていない時には、明らかに何か良くない原因がある。つまり、状態が悪いということだから、そういう馬は評価を下げた方がいい。
 
 また、デビューして間もない馬は歩き方の形は変えられないけど、成長してフォームが変わってくれば力強さが出てくる馬はたくさんいる。

日常生活でお目にかかることがない「素軽い」という表現

 「素軽くて良いですね」というコメントもよく聞くだろう。これも軽くスッスッと歩く馬の特性を表した言い回し。なかなか競馬以外で使う表現ではないよな。

 ちなみに俺が「素軽い」と言う時は、ほかに褒め言葉がない時。パドック解説は馬を見た瞬間に言わなきゃならないので、見た瞬間のイメージを伝えるしかない。本当に良いなと思った時は、素直に「良いねぇ~」と俺は褒めるよ。

短期間で「馬体が増えても引き締まった」というのは嘘

 「数字上の体重は増えていますが、馬体は引き締まりましたね」といった、ややもすると矛盾しているようなことを言う解説者もいる。
 「しっかりと筋肉が付いた」ということを言いたいのだろうが、競馬を使って中2~3週の短期間ではあり得ないことというのは覚えていてもらいたい。百歩譲って「筋肉が付いたのではなく、脂肪が抜けて筋肉が見えるようになった」と言うのなら理解ができる。
 例えば半年休んで、放牧に行ってしっかりと乗り込んでいれば、体重が増えても筋肉が付いて引き締まることはある。これは若い馬に限らず、古馬でも極端に変わる馬もいる。

 馬は肉体的なパワーを付けることができる期間は短いけど、それ以外の部分は走ることの経験値で身に付けるものがある。「今は一生懸命走るんだ」とか、「ここは息を抜いていいんだ」とか、経験を積むことでレースを覚えて成績が良くなることがある。

・「馬体重ほど小さく見えない」というのは、前後を歩く馬にも影響を受ける

 小柄な馬に対して「数字ほど小さく見えない」と褒める解説者もいる。ただ、それは前を歩く馬がさらに小さかったら、それと比べて大きく見えるという話だろうと思う。
 馬の背丈は概ね160~165cmぐらいだ。たとえば、160cmで500kgの馬の後ろを歩く馬が470kgで165cmなら体重のわりに大きく見えるだろう。そのくらいの差だと思う。決して大きく見えたほうが状態が良いとか競走能力が高いということはない。

 そもそも一頭だけで馬が出てきて、何kgに見えるか?と質問したら、パドック解説者でもキッチリと当てられないはず。平気で10kg以上違う馬体重を言うだろう。「小さく見えない」とか「ふっくら見える」とかは見る人の感覚的なものに過ぎないから、パドック中継でこういったフレーズを聞いても、皆さんはあまり気にする必要はない。

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