令和の時代に「エースで4番」を体現した甲子園のスター│山田陽翔(2021・2022年、近江)

注目は奪三振数

山田陽翔の甲子園での成績。出場3回とも5試合に登板

15試合 112回 1721球 115奪三振 四死球42 自責点39 防御率3.13 被安打率7.39 奪三振率9.24 四死球率3.38

この成績で注目をしたいのは、奪三振数である。115奪三振は、歴代3位の記録だ。 歴代記録(TOP10)は以下のようになる。

 1位:桑田真澄(PL学園)150
 2位:島袋洋奨(興南)130
 3位:山田陽翔(近江)115
 4位:柴田勲(法政二)113
 4位:石井毅(箕島)113
 6位:斎藤佑樹(早稲田実)104
 7位:尾崎行雄(浪商)102
 7位:田中将大(駒大苫小牧)102
 9位:奥川恭伸(星稜)100
 10位:荒木大輔(早稲田実)97
 10位:松坂大輔(横浜)97

 この成績を見ても、三振を取る能力は歴代的にトップクラスなのがわかる。防御率は3点台と多少高めに見えるが、大会終盤の疲労の影響もあるだろう。分業制がメインになりつつある高校野球において、一人で投げ抜きながら、この成績は非常に素晴らしいものがある。大会を通した力配分を意識して、スプリットなどの速い変化球を主体に組み立てるなど、ピッチングを通してクレバーさも見受けられた。試合のなかで見ても、状況に応じて配球を変えることや判断力・対応力の高さは長いシーズンを戦うプロ野球でも活かすことができるだろう。

 現在の高校野球では、球数制限があるなかでの戦略で、20〜70球前後を3〜4人でつないでいくチームが増えつつある。投手として守られる部分はあるが、山田のような馬力があり、完投能力が高いスーパーエースの存在は、非常に価値が高く魅力的に感じる。球数の多さは賛否両論あったが、スタミナや変化球、フィールディングは高いレベルに達しつつある。球速をもう少し上げることにより、早い段階で1軍でも活躍できるレベルに達することができるのではないだろうか。2025年はリリーフの一角として好投をみせているが、甲子園のスターとして活躍をした山田がプロ野球の世界でも活躍していくことに期待していきたい。

本文は『データで読む甲子園の怪物たち』(ゴジキ著:集英社刊)より。

ページ: 1 2 3 4

【書誌情報】
『データで読む甲子園の怪物たち 』
著:ゴジキ


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甲子園を沸かせてきた高校野球の「怪物」たち。高校生の時点で球史に名を残した選手たちは、プロ野球選手として大成功した者もいれば、高校時代ほどの成績を残せず引退した者、プロ野球の世界に入れなかった者もいる。甲子園で伝説を残した選手のターニングポイントはどこにあるのか? そしてプロでも活躍する選手たちが持っている力とはなにか?名選手たちの甲子園の成績や飛躍のきっかけになった出来事の分析を通して、高校野球における「怪物」の条件と、変わりゆくスター選手像、球児たちのキャリアを考える。

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ダルビッシュ有 田中将大 森友哉 髙橋宏斗 藤浪晋太郎 梅田大喜 真壁賢守 町田友潤 伊藤拓郎 吉永健太朗 松本哲幣 上野翔太郎 斎藤佑樹 浅村栄斗 今井達也 中村奨成 吉田輝星 寺原隼人 平田良介 佐藤由規 中村晃 菊池雄星 清宮幸太郎 中田翔 今宮健太 大谷翔平 根尾昂 山田陽翔 鷲谷修也 副島浩史 島袋洋奨 佐々木麟太郎

ゴジキ(@godziki_55)
野球著作家。著書に『戦略で読む高校野球』(集英社新書)、『甲子園強豪校の監督術』(小学館クリエイティブ)、『21世紀プロ野球戦術大全』(イースト・プレス)、『巨人軍解体新書』(光文社新書)、『アンチデータベースボール』(カンゼン)など多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターをはじめとして、メディアへのコメント寄稿を多数おこなう。

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