症状と漢方処方 便秘【生薬と漢方薬の事典】

便秘

おなかが張る、コロコロと乾燥した便が出るなど、便秘の症状にはいろいろあります。便秘は腹部膨満感や肌荒れなどの不調を招き、慢性的な便秘に悩む人は少なくありません。便秘の原因には、おなかが冷えている陽虚や、腸にうるおいが不足している陰虚、血の巡りが悪くなる瘀血などがあります。ただ下剤を使うというのではなく、体質にあった処方が便秘の改善に効果があります。

体質からみる 陽虚による便秘

冷えによって巡りが悪くなる

処方:大建中湯

おなかを温めて動かす処方を

市販の便秘薬を飲むとおなかが痛くなったり下痢をしてしまう人は、漢方薬での治療が有効です。大建中湯にはおなかを温めて動かす作用があります。下剤は入っていないので、おなかの痛みを軽減してゆるやかに改善します。ただし頑固な便秘には、効きめが弱い処方です。

体質からみる陰虚による便秘

尿は近いのに便は乾燥している

処方:麻子仁丸

乾燥によって便が出にくい

血や水が不足して乾燥傾向が強い便秘で、肌も乾燥して、のども渇きやすくなります。食欲旺盛の人や高齢者にも多いこのタイプは麻子仁丸を用いて、腸をうるおすことでコロコロと乾燥した便秘を改善します。

体質からみる瘀血による便秘

体質によって起こるがんこな便秘

処方:桃核承気湯

一日1回でも効く強い処方

もともと瘀血の体質の人で便秘もある場合には、桃核承気湯を用います。瘀血にともなう月経痛も緩和され、下痢させることで月経前のイライラも改善されます。桃核承気湯は効き目が強くあらわれるので、一日3回処方されても、1回で十分効果があり、3回飲める人は少ない処方です。

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痔には乙字湯

痔の原因に気虚と瘀血が関係しています。気虚によって肛門のあたりの組織が下がり、それによって血行が悪くなって痔になります。痔によく処方されるのは、気を補い、上にあげる働きがある乙字湯です。

痔を悪化させる背景には、疲れによる気虚の悪化があります。また感情やストレスなどは瘀血を悪化させます。気虚や瘀血がすすんで痔が悪化した場合は、漢方で対処するよりも、外科的な処置が必要になります。

【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎

【書誌情報】
『生薬と漢方薬の辞典』
著:田中耕一郎/ 監修:奈良和彦・千葉浩輝

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