名車「ファントム」は走る芸術品?ダリ、ウォーホルも愛したアートの殿堂


ロールス・ロイスの最高峰モデル「ファントム」が、2025年に誕生100周年を迎えます。この名車は、単なる高級車ではありません。サルバドール・ダリやアンディ・ウォーホルといった20世紀を代表するアーティストたちを魅了し、彼らの創造性を刺激してきた「走る芸術品」です。
ロールス・ロイスのCEO、クリス・ブラウンリッジ氏が「この100年を振り返り、ファントムの物語を形づくってきた芸術家たちに思いを馳せる絶好の機会」と語るように、ファントムとアート界の深い絆に迫ります。
カリフラワーで埋め尽くされたファントム
シュールレアリスムの巨匠、サルバドール・ダリは、自らのパフォーマンスにファントムを起用しました。1955年、講演のために借りたファントムの車内を500kgのカリフラワーで埋め尽くし、パリの街を疾走。大学の前でドアを開けると、カリフラワーが地面に雪崩れ落ちるという、伝説的な登場シーンを演じました。

この奇抜な行動は、ダリの講演内容よりも強く人々の記憶に刻まれました。ロールス・ロイスは、この出来事にオマージュを捧げ、現代アーティストに依頼してオリジナルのアート作品を制作しています。
ウォーホルも所有した名車
ポップアートの巨匠、アンディ・ウォーホルもファントムに魅了された一人です。彼は、1937年製のファントムをスイスのアンティークショップで偶然見つけ、即購入。1978年まで愛用し、その車は彼の個性とライフスタイルを象徴する存在となりました。

ダリとニューヨークで出会った際、「圧倒されていた」と後に語られたウォーホルですが、ファントムという共通の愛車を通じて、アートの歴史に名を刻む2人の巨匠のつながりが垣間見えます。

すべてのファントムに宿るアートの魂
ファントムと芸術界のつながりは、車体に輝く象徴的なマスコット「スピリット・オブ・エクスタシー」にまでさかのぼります。
この彫刻を手掛けたのは、才能あふれるアーティスト、チャールズ・ロビンソン・サイクスです。ルーヴル美術館の「サモトラケのニケ」から着想を得て、「車の滑らかさとスピードに非常に感銘を受け、妖精のように繊細な存在でさえ、バランスを崩すことなくボンネットに乗っていられる」というイメージで、優美なマスコットを制作しました。
サイクスの手によって生み出されたこのマスコットは、1911年以降、すべてのロールス・ロイスに冠され、ファントムに永遠のアートの魂を吹き込み続けています。
100年の時を超えて、ファントムは単なる移動手段ではなく、オーナーの想いを映し出す「キャンバス」であり、時代を動かすクリエイターたちの「創造の触媒」であり続けています。
あなたも、ファントムが紡いできたアートの世界に触れてみませんか?