【野球ごはん⑪】乳製品、大豆製品について≪令和版≫

体を支える骨の材料のカルシウム

 カルシウムと聞くと、ほとんどの方は「骨・歯の材料」を思い浮かべると思います。体内のカルシウムの99%が、骨・歯に存在しています。体を支えている骨は、毎日、代謝が行われています。骨からカルシウムが失われ、食事から補給したカルシウムが骨に取り込まれます。食事からのカルシウム補給量が少ない日が続くと、骨に取り込まれるカルシウム量が減りますので、骨に含まれるカルシウム量が減少します。骨量(骨密度)の低下です。
 これは私の経験になりますが、増量を望む選手の食事分析を行った時、順調に体重を増やす選手は、エネルギー源となる炭水化物、体の材料となるタンパク質、そして、骨の材料となるカルシウムを十分にとれている共通点があります。多くの野球選手は、筋肉量の増加による体重増加を望みます。しかし、骨量が低下すると、体を支える骨が弱くなりますので、筋肉量が増えづらくなるのではと考えます。私は、選手から増量の相談を受けた時、必ず炭水化物、タンパク質、カルシウムが十分にとれているか、食事内容を確認しています。

不足しているカルシウム

 (表1)は、厚生労働省が発表した「国民健康・栄養調査」による年齢別の1日あたりのカルシウム摂取量の平均値です。

 (表2)は、1日あたりのカルシウムの食事摂取基準です。

 食事摂取基準とは、国民の健康維持・増進、栄養素欠乏症の予防などを目的とし、1日あたりのエネルギー、各栄養素の摂取量を示した基準です。厚生労働省が5年ごとに改定しています。表1、表2では、年齢区分が異なりますが、国民健康・栄養調査で調べた摂取量が食事摂取基準を下回っていることが分かります。
 私が行っている選手の食事分析では、約20年間で選手の牛乳・ヨーグルトなどの乳製品のとり方に変化がありました。20年前は、自宅などで水やお茶の代わりに牛乳を飲む選手が多かったです。1リットル以上飲んでいる選手が多く、その頃は「飲み過ぎに気をつけて」と、話していました。しかし、今は、1日1回牛乳またはヨーグルト(約100~200cc)が登場するぐらいです。減少しているように感じます。選手に聞くと「なんとなく」と答えることが多いです。20年前は「飲み過ぎに気をつけて」と話していましたが今は、「アレルギー、苦手でなければ、もう少し乳製品の補給量を増やしたい」と話すことが多くなりました。
 カルシウムは、牛乳、ヨーグルトなどの乳製品が手軽にとりやすいです。しかし、牛乳アレルギーや乳製品が苦手と話す選手がいます。乳製品の他にカルシウムが多い食品は、じゃこ・ししゃもなど骨ごと食べられる魚、ほうれん草や小松菜などの青菜類、納豆、ごまです。これらの食品を組み合わせてとりたいです。

骨・歯は、カルシウムだけで作られない

 骨・歯は、カルシウムだけでなく、マグネシウム、リンも含まれています。(表3)(表4)は、マグネシウムの「国民健康・栄養調査」による年齢別の1日あたりの摂取量の平均値及び、1日あたりの食事摂取基準です。

 すべての年齢ではありませんが、国民健康・栄養調査で調べた摂取量が食事摂取基準を下回っています。
 (図1)は、骨量の経年変化を示したものです。

 成長ともに骨量が増え、20歳戦後にピークを迎えます。成長期に十分なカルシウム、マグネシウムを補給することが、丈夫な骨づくりつながると考えます。
 マグネシウムは、雑穀、魚、納豆や豆乳、きなこなどの大豆製品、海そう、野菜に含まれています。

牛乳、ヨーグルト、豆乳の違い

 選手から「牛乳、ヨーグルト、豆乳の違いは何ですか」と聞かれることがあります。ヨーグルトは牛乳から作られ、豆乳は大豆から作られます。原材料が異なりますので、含まれる栄養成分も異なります。(表5)は、牛乳、ヨーグルト、豆乳に含まれる栄養成分表です。

 表の通り、カルシウムは牛乳、ヨーグルトに多く含まれ、マグネシウムは豆乳が、乳製品に比べて多く含まれています。
 また、選手から「豆乳からカルシウムはとれますか?」と質問を受けます。一般的な豆乳はカルシウムを含む量は少ないです。しかし、スーパーで多く売られている「調整豆乳」は、工場などで飲みやすく加工した製品です。製品によりますが、カルシウムを添加した調整豆乳があります。カルシウムをとりたい時は牛乳、ヨーグルト、カルシウムを添加した調整豆乳をとる(ラベルを確認してください)。

調整豆乳(左)はカルシウムが多く含まれている

 乳製品をとりたいけれど脂質を控えたい時は低脂肪牛乳、ドリンクヨーグルトを選ぶ。マグネシウムをとりたい時は豆乳、調整豆乳をとるなど、目的に合わせて食品を選んでくださいね。

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