五稜郭や松前城だけじゃない!北海道の城は個性派揃い【眠れなくなるほど面白い 図解 北海道の話】

渡島半島に残る中世と近世の城郭

北海道に築かれた最初期の城は、現在の函館から上ノ国にかけての海岸沿いにあった「道南十二館」と呼ばれる砦でした。道南十二館は、南部氏との戦いに敗れ本州から渡島半島に逃れた安東氏が、家臣を配置した館と考えられています。

なお、道南十二館は前述の「コシャマインの戦い」において、茂別館(北斗市矢不来)と花沢館(上ノ国町上ノ国)の2つを除く10館がアイヌの手によって一度は陥落したものの、この戦で戦功を上げた武田信広が花沢館の領主だった蠣崎氏を継ぎ、勝山館を築きました。

この勝山館跡からは、数多くの住居や出土遺物のほか、アイヌが使用した骨角器や、和人墓と隣接したアイヌ墓などが見つかっていることから、和人とアイヌが混住していたと考えられています。

時代は下って幕末、幕府によって函館に築かれたのが「日本初の西洋式城郭」と説明されることがある五稜郭です。しかし、実は函館の隣の北斗市に、五稜郭が完成する11年前に西洋式の築城法を取り入れて築かれた戸切地陣屋(へきりちじんや)があります

戸切地陣屋は、蝦夷地(北海道)防衛強化を目的として松前藩が構築した陣屋でしたが、箱館戦争の際に旧幕府軍の侵攻を受けた際、城の守護隊の手によって自燃・放棄されました。現在、戸切地陣屋は土塁などの保存状態がよいことから国の史跡に指定されています。

交易と戦いの拠点となった城

勝山館と戸切地陣屋の現在

勝山館は、松前氏の祖である武田信広がコシャマインの戦い後の15世紀後半に築いた山城で、江戸時代の松前藩成立まで、武田・蠣崎氏の日本海側での政治・軍事・交易の一大拠点でした。史跡指定地内に建てられた「勝山館跡ガイダンス施設」では、出土品や復原された館の模型や墓のレプリカなどを見学することができます。

また、戸切地陣屋跡は史跡公園として整備されており、当時の面影を残す本陣郭内を散策することができるほか、春の桜や秋の紅葉が楽しめるスポットとしても有名です。

▲ 勝山館跡。かつて館内では、アイヌと和人が混住していたと考えられている(画像提供:上ノ国町)。

道南の城跡マップ

▲ 出典:国土地理院撮影の空中写真(2008年撮影)

戸切地陣屋跡の空撮。佐久間象山の洋学塾に学んだ松前藩士・藤原重太が設計した。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 北海道の話』監修:和田 哲

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