ドアもクーラーボックスも開けちゃう!『森のくまさん』のモデル “アメリカクロクマ”の生態とは【眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話】

『森のくまさん』のモデル アメリカクロクマ

すっきりした顔立ち:鼻筋が通り、丸い耳が特徴。ぬいぐるみのような愛嬌も。
肩にコブがない:ヒグマと違って、肩の筋肉が盛り上がっていない。
毛色は多彩:黒、茶、金、シナモン色、灰色など。地域によって傾向も異なる。
短いツメ:短く曲がったツメで、高い木にもスイスイ登る。
体の大きさ:体長120〜200cm、体重は最大250kg。秋には脂肪をしっかり蓄える。

アメリカクロクマは、北アメリカに生息するクマのなかでもっとも広く分布している種。柔軟な環境適応力を持ち、森はもちろん、住宅地やキャンプ場など人の近くにも姿を現すことがあります。足音をほとんど立てずに歩けるため、不意に遭遇して驚かれることも!

アメリカクロクマといえど黒くない個体もいる

童謡や絵本でおなじみの『森のくまさん』。そのモデルとされているのが、アメリカクロクマです。

ただ、名前に「クロ」とついていても、毛の色は黒とは限りません。茶、金、シナモン色、灰色がかった個体までいて、その毛色は実にさまざま。特にロッキー山脈周辺では淡い色の個体が多く見られ、「シナモンベア」と呼ばれることもあります。英語では「ブラックベア」という名前で知られていますが、これも見た目に関係なく使われている呼び名のひとつ。つまり「クロクマ」という名前は、あくまで分類上のラベルにすぎません。

アメリカクロクマがこの地球に現れたのは、約50万年前のこと。ヒグマやホッキョクグマよりも古くから北アメリカにすみつき、氷河期や環境の変化をくぐり抜けながら、現在まで生き延びてきた古参のクマなのです。

アラスカからカナダ、アメリカ本土、メキシコ北部にかけて森林や山地、湿地など、自然があればどこでも暮らせる柔軟さを持ち、ときには人里に姿を見せることもあります。

体長は成獣で120〜200cm、オスなら体重が300kg近くになることも。秋には冬眠に備えて、脂肪をたっぷりと蓄えるので、季節によって体型が変わるのも見どころのひとつです

よく似たヒグマと見分けるポイントは、肩に盛り上がったコブ(筋肉)がないこと、顔立ちがすっきりしていること、そして前足のツメが短めなこと。動物園などで出会ったときには、そんな細部にも注目してみてください。

柔軟な適応能力を持つアメリカクロクマ。その姿には、数十万年の時間を生き抜いてきた、たくましくて愛らしいクマの魅力が詰まっています。

性格はおだやかだが油断は禁物!

アメリカクロクマは、クマのなかでも比較的おとなしい性格で知られています。森の気配に敏感で、人の姿や声を感じると、さっと身を潜めたり、静かにその場を離れたり。争いを避けるように、ひっそりと生きるのがこのクマの基本スタイルです。

けれども、あくまでそれは普段の姿。子グマを守ろうとする母グマや、食べ物をめぐる争いの場面では、一変して攻撃的になることもあります。どんなにおだやかに見えたとしても、そこには“野生”という揺るぎない本能が息づいているのです

食性はとても幅広く、果実から昆虫、小動物、魚まで、森の恵みを何でも取り込む柔軟な雑食性。秋には、冬眠に備えてひたすら食べ続け、体にたっぷりと脂肪を蓄えます。

大きいわりに手先がとにかく器用

アメリカクロクマは、その巨体からは想像もつかないほど、静かに歩くことができます。体重が300kg近くあるとは思えない軽やかさで、森のなかを颯爽と通り抜けるのです。ハイカーやキャンパーが気づかぬうちに、すぐそばまで来ていた……なんてことも。

足の裏には、柔らかな肉球があり、まるで高性能なクッションのように着地の音を吸収してくれます。踏みしめるたびに響くはずの重さが、どこかへと消えていくそれは、森に溶け込むための進化なのです。

さらに注目すべきは、その器用な前足。大きくて力強いその足は、実はとても繊細に動かすことができます。ときにはクーラーボックスのフタを開けたり、ドアノブをひねったりと、人間の手顔負けの動きを見せるようです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話』監修:山﨑晃司

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話』
監修:山﨑晃司


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世界中数多くの動物園で飼育され、アニメや漫画、ファンシーキャラクターのモチーフとしても起用されることの多い人気の動物「クマ」。
最近では日本全国で目撃が相次いで発生したり、温暖化の影響で冬眠をしないクマも確認されたりすることから、話題に事欠かない今大注目の動物です。

しかし、ペットとして飼うことは難しく、ときに人を襲う恐ろしい側面も持ち合わせるクマ。
それなのになぜ人間にとって馴染み深く身近な存在に感じるのでしょうか。

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愛玩動物、猛獣、食用、ワーキングアニマルなど、さまざまな角度からクマの生態と特徴を解説し、クマの知られざる魅力に迫ります。
これを読めばクマのことがもっと好きになること間違いなしの一冊です。

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