クマの足裏に秘密道具が!? 氷上を滑らず歩ける理由とは【眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話】

クマの足の裏には滑り止めがついている

秘密の正体は「パピラ」と呼ばれる小突起

多くの哺乳類の足の裏には、驚くべき滑り止め機能が備わっています。見た目には大きな肉球と分厚い足裏が目立ちますが、その構造をよく見ると、地形や環境に応じた繊細な適応の痕跡がわかるのです。

たとえばホッキョクグマ。氷の上で暮らす彼らは、ツルツルと滑りそうな極寒の大地でも軽やかに歩くことができます。その秘密は、足の裏にある小さな突起―「パピラ」と呼ばれる滑り止め構造です。このパピラが氷の表面にグリップし、まるでスパイクのような働きをします。さらに、肉球の間には厚い毛が密生しており、摩擦力を高めつつ冷気からも足を守っています。寒冷地で生きるために特化した、まさに北極仕様のつくりといえるでしょう。

では、森林や山岳地帯に暮らすクマたちはどうでしょうか?

ツキノワグマやヒグマの足の裏にも、やはりパピラが存在します。氷上ほどではないにしても、岩場や斜面、ぬかるんだ地面などを滑らずに歩くための滑り止め機能を備えているのです。また、彼らの足は指が広がりやすい構造になっていて、不安定な地面でもしっかりと体重を分散させることができます。加えて、柔らかな脂肪層のクッションが衝撃を吸収し、静かに歩くことにも役立っています。

滑り止め構造「パピラ」とは

パピラ

肉球にある小さな突起のこと。これが滑り止めとなり、氷上や斜面などでの転倒を防ぐ。

ホッキョクグマの足の裏

肉球にあるパピラの密度は高め。びっしりと生えた厚い毛で摩擦力を高めつつ、冷たい氷の上でも足を守ることができる。

ツキノワグマの足の裏

パピラの密度はやや控えめ。広がりやすい指を持ち、山岳地帯の傾斜やぬかるんだ土の上などを滑らずに歩くことができる。

3種のクマ別 パピラ発達度

氷河にすむホッキョクグマ:パピラ密度【びっしり】
山地にすむヒグマ:パピラ密度【まあまあ】
熱帯にすむマレーグマ:パピラ密度【控えめ】

すむ環境によってパピラの密度が変化するなど、足の裏には種類ごとに異なる工夫と進化が詰まっています。見た目はどれもモフモフの毛に包まれた肉球ですが、その実態は、滑らず、静かに、確実に歩くための精密な道具なのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話』監修:山﨑晃司

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 クマの話』
監修:山﨑晃司


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