魔法の槌で巨人を倒す心優しき荒くれ者
ヴァイキング時代に神と崇(あが)められたのはオーディンでしたが、農耕が盛んになり人々が大地で暮らすようになると、北欧の守り神は雷神トールに移行します。
トールは、オーディンと大地の化身ヨルズの息子。農耕の神として信仰されてきました。
神話の中では、筋骨隆々とした大きな身体で、金髪に赤いひげ。手には鉄の手袋をはめて魔法の槌(つち)ミョルニルを持ち、パワーが増強するベルトをしめているという勇ましい姿で描かれています。2頭の山羊(やぎ)が引く戦車に乗って縦横無尽に世界を駆け巡りました。
北欧では、雷が響くとトールが戦車で空を駆け抜け、稲妻が光るとミョルニルを投げつけていると言い伝えられてきました。これが雷神と呼ばれるゆえんです。
ミョルニルは敵に投げつければ百発百中の武器ですが、空腹のトールが戦車を引く山羊を食べ尽くした後、残った骨にミョルニルを振ると山羊は何度でもよみがえりました。この槌は北欧ではお守りにもなっています。
最強の戦士として巨人族との戦いに明け暮れたトール。神族と人間を守るために戦いぬく、心優しい愛のある神でもありました。
最終戦争ラグナロクでは大蛇ヨルムンガンドと一騎打ちとなり、互いに絶命します。
*ヨルムンガンド:毒を持つ蛇の怪物。ロキの息子でもある。ラグナロクの際には、トールが投げた槌で倒れるが、最期に吹きかけた毒でトールも命を落とす。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』
著者:鈴木悠介 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
早稲田大学卒業。予備校講師(世界史)。現在は各地でのライブ授業に加え、YouTubeの予備校「ただよび」やオンライン予備校「学びエイド」などの映像配信授業でも活躍中。また教育系YouTuberとしての顔も持ち、YouTube「すずゆうチャンネル」ではさまざまな世界史コンテンツを発信している。
恋多き神々の王・ゼウス、神々を従える最強の神・トール、4本腕の荒ぶる神・シヴァ。 個性豊かで魅力たっぷり! 世界の神様のキャラクターを大解説! ギリシャ神話、北欧神話、ケルト神話、エジプト神話、インド神話、メソアメリカ神話。人気抜群の神々と英雄たち32神(人)の性格とエピソードを、イラストと図を交え、わかりやすく紹介します。神々たちの愛憎ドラマのギリシャ神話、世界樹の下、終末に向かって突き進む北欧神話、妖精も登場するケルト神話……。神々と怪物、巨人、英雄たちが繰り広げる壮大な戦いや奇想天外な天地創造の物語など、想像を絶する神話のストーリーと世界観もくわしく解説しました。世界の神々を知ると、映画、小説、テレビドラマ、マンガ、ゲームがもっと楽しくなります!
公開日:2022.09.24