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カインによる弟アベルの殺害【聖書】

Text:渋谷伸博

人類史上最初の殺人事件は罪の重さを伝える

エデンの園を追放されたアダムとエバの間には、カインとアベルという兄弟が生まれました。カインは土を耕して農作をする者となり、アベルは羊を飼う者となりました。

2人は神を祀(まつ)るためにそれぞれの収穫物、カインは土の実りのもの、アベルは羊の肥えた初子(ういご=群れで最初に生まれた子)を献(ささ)げ物としました。

しかし、神はアベルの献げ物だけに目を留めて、カインのものには目を留めませんでした。

 

憤(いきどお)ったカインが顔を伏せると、神は彼に「どうして怒って顔を伏せるのか」と言われました。

たしかに神の行為は理不尽に思えますが、人間には理解できない深い意味があるはずです。カインは自分が正しいと思うのであれば顔を上げて神と向かい合うべきで、そうしなければ自ら罪を招き寄せることになる、神はそう警告したのです。

けれども、弟への嫉妬にかられたカインは、アベルを野に誘い出し、殺してしまいました。

神はすぐにこのことに気づき、カインに「お前の弟アベルは、どこにいるのか」と尋ねました。

カインは「知りません。わたしは弟の番人でしょうか」ととぼけましたが、神はすべてをご承知でした。

「何ということをしたのか。お前の弟の血が土の中からわたしに向かって叫んでいる。今、お前は呪われる者となった」

アダムとエバと同様、カインも犯してから罪の重さに打ちひしがれます。カインは神に「わたしの罪は重すぎて負いきれません」と嘆きます。神はカインを呪いながらも、一方で救いの道も示します。カインが誰かに殺されないよう「*しるし」をつけられたのです。

用語解説 *しるし 具体的にどのようなものなのかは不明。西洋世界では、私たちは弟殺しの罪を背負った「カインの末裔」とされる。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 聖書』
著者:渋谷伸博  日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1960年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。宗教史研究家。よみうりカルチャーなどで神話をテーマとした講座も開講している。著書多数。近著に『一生に一度は参拝したい全国の神社めぐり』『聖地鉄道めぐり』『神々だけに許された地 秘境神社めぐり』『歴史さんぽ東京の神社・お寺めぐり』(いずれもジー・ビー)、『あなたの知らない般若心経』(宮坂宥洪監修、洋泉社新書)、『諸国神社 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)などがある。


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