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イスラム世界のトルコ系部族集団はどのように台頭してきたのか?【世界史】

Text:鈴木 旭

中央アジアのトルコ化=トルキスタン

六世紀以来、中央アジアにはトルコ系の突とっ厥け つ族の支配が始まり、九世紀後半には同じトルコ系のウイグル族が定住し、中央アジアのトルコ化が進んだ。同時にトルコのイスラム化も進展し、十世紀になって、中央アジア初のトルコ系イスラム朝のカラ・ハン朝が出現する。

こうした中央アジアの一連のトルコ化とイスラム化を総称して「トルキスタン」という。さらに十一世紀半ば、トウグリル・ベクがセルジューク朝を開設。バグダードに入城する。そして、ブワイフ朝の支配下にあったカリフを救出した功によりスルタン(領主権)の称号を得たことで、次の三つの改革を断行する。

第一はブワイフ朝のイクター制を採用。軍人に現金で俸給を払うのではなく、分与地を与え、土地の徴税権を与えたこと。第二は神学、法学を学ぶザーミア学院を開設してスンニ派を支援したこと。勢いに乗り、ひと時はエルサレムを占領し、ビザンツ帝国に侵入している。

第三は騎馬戦士としての武芸と忠誠心を評価された奴隷兵マムルークを重視したこと。マムルーク軍団を数千人も抱えたカリフがいるほど、イスラム帝国には欠かせない存在となる。しかも、奴隷から解放され、重用されてカリフの存廃まで口を挟むようになる。

その結果、サラディンがエジプトに建てたアイユーブ朝を滅ぼし、一二五〇年、マムルーク朝が開かれたほどである。マムルーク朝はモンゴル軍の侵入さえも許さず、見事に撃退し、開設後、二百五十年も続いている。トルコ系部族が中央アジアにおいて、イスラム世界のチャンピオンになったのである。

 

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 世界史』
著:鈴木 旭 日本文芸社刊

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