始祖鳥
原初の鳥だが、現生する鳥類の祖先ではない
三畳紀の末に再び大量絶滅が起こりました。また、この時期にパンゲア大陸は分裂しはじめ、続くジュラ紀には、北のローラシア大陸と南のゴンドワナ大陸のふたつになっています。
気候も大きく変わり、乾燥していた三畳紀とはうって変わって、ジュラ紀は地上の大半が温暖湿潤な熱帯性気候になりました。
この中生代ジュラ紀に起きた大きな出来事のひとつに鳥の登場があります。学名アーケオプテリクス、いわゆる「始祖鳥」の登場です。始祖鳥の骨格の特徴の多くは恐竜のようでしたが、肉食恐竜に比べ長い腕など、体のいくつかに鳥類の特徴ももっていました。
立派な翼をもつその化石が1800年代後半にドイツにあるジュラ紀後期の地層から発見されたときには、その直前に発表されていたダーウィンの進化論を証明する重要な証拠とみなされ「爬虫類から現在の鳥類への進化を示すもの」と考えられました。
たしかに、始祖鳥は、翼にカギ爪をもつ指がまだある、口にクチバシでなく鋭い歯がある、尾に骨があるなど、恐竜の特徴も併せもっています。しかし、その後の詳しい研究により、始祖鳥には羽ばたくために必要な筋肉を支える骨(胸骨の竜骨突起)がなかったことがわかり、現在の鳥類のように空を飛び回るのではなく、木から木へ滑空するだけの原始的な鳥だったことがわかり、この説は否定されました。
始祖鳥は原始的な鳥ではあったものの、現在の鳥類の直接の祖先筋ではないとされています。わたしたちの知っている鳥類は、始祖鳥とは別に進化した仲間なのです。
原始的な鳥の姿 始祖鳥
【始祖鳥】中生代ジュラ紀後期、アーケオプテリクス類、約50センチ
・歯のあるクチバシ
・全身に羽毛
・カギ爪のある翼
現在の鳥類の最大の特徴である羽毛を持ちながら、歯の生えたあご長い尻尾など、小型の肉食恐竜としての特徴ももつ。主な獲物としては、昆虫や小型爬虫類・哺乳類が考えられている。
始祖鳥は飛べたのか?
学者たちの間では、長年、鳥と恐竜の特徴を併せもつ始祖鳥が「飛べたか否か」について激しい議論が続いている。
『飛べた』派
● 翼や尾の構造は十分な揚力や推進力をもつ
● 平衡感覚を司る三半規管がよく発達している
● 前肢の構造は短い距離を飛ぶことができるようになっている
『飛べない』派
●飛ぶのに必要な骨が発達していない
● 飛ぶための胸筋が未発達
いずれにしろ、飛べた可能性はあるが、ハトやカラスほどうまくは飛べなかったようだ。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』代表監修:大橋 智之
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』
代表監修:大橋 智之
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公開日:2025.03.04
