9:会話の場面|話がかみ合わないとき
○エピソード
認知症の母と話していても、こちらの聞きたいことに対する返事が返ってこず、いつもちぐはぐでズレた会話になります。私の聞き方が悪いのでしょうか。
【対応1】「そうなんだね」「そうかあ」と間違いを訂正せずに受け止める
まず、一生懸命に会話をしようとしているあなたのことも相手のことも、責める必要はありません。一方で、会話を諦めたり、怒ったりするのももったいないことです。
正しくても間違っていても、本人にとっては言っていることが事実なのです。あなたに気持ちの余裕があるなら、「そうなんだね」「うんうん、そうかあ」と、少しだけ本人の世界に付き合いましょう。本人の世界を尊重すれば、それで本人は安心できます。
【対応2】ズレた話をそのまま楽しみながら聞き少しずつ軌道修正する
話がかみ合わないことをズバッと指摘すると、本人はとたんに不安になってしまい、心理的な溝ができるでしょう。
最初は認知症がある人のちょっとした誤解を受け入れて肯定し、そのまま話す中で少し落ち着いてきたら、現状とズレてしまっていることを少しずつやんわり伝え、最終的に話したかった内容まで修正していくとよいでしょう。そうすると、本人は不安を感じずに、順を追って物事を理解することができます。大事なのは、本人が安心して話ができることなのです。
また、できれば家族も、本人のその「ズレ」そのものを楽しんでしまいましょう。危険が伴うとうな勘違いははっきり訂正しますが、そうでもない場合は、独特の世界観を楽しむ気持ちで接すると、本人も家族も気持ちよくかかわることができます。
【出典】『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子
【書誌情報】
『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』
著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子
認知症は、理解しにくい言動を引き起こす脳の病気です。家族が「どう言葉をかけたらいいんだろう」「どう接したらいいのかな」「とてもつらい」と感じることが多いでしょう。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」では、介護現場の専門家が日々の接し方や対応のヒントを提供し、プロの視点と方法で、家庭での介護が少しでもラクになるように、ご本人とともにかけがえのない日々を過ごしてほしいという願いが込められています。「認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方」を活用して、実践してほしいと思います。今後のためにも読んでおきたいおすすめの一冊です。
公開日:2024.07.26