【野球ごはん④】免疫力について≪令和版≫

Text:上村香久子

*野球選手の免疫力は高い?
野球選手、スポーツ選手は、普段から体をきたえているので、カゼを引きにくいイメージをお持ちかも知れません。しかし、実はスポーツ選手はカゼを引きやすいのです。

図1は、運動量と上気道感染症(カゼ症候群)のリスクとの関係を表したものです。適度な運動は、上気道感染症のリスクを下げます。しかし、高強度の練習が続くとカゼを引くリスクが上がることが研究で分かっています。なぜ、リスクが上がるのか。運動は、ヒトにとってはストレスになります。通常はストレスホルモンが分泌され、ストレスから体を守る反応を起こします。しかし、運動強度が上がり高ストレス状態が続くと、ホルモンの分泌バランスが崩れてしまい、免疫力が落ちやすくなります。
練習時間が長くなる、強度が高くなる時は免疫力が落ちやすくなりますので、注意が必要です。そのほか、運動だけでなく、睡眠不足、不規則な生活習慣、栄養バランスが崩れた食事、無理な減量も免疫力が落ちやすくなります。
つまり野球選手は、免疫力を落とさないためにバランスよい食事、十分な睡眠、こまめな水分補給を行うことが大切です。

*免疫力に関わる栄養素・食品
免疫機能に関わる主な栄養素をまとめました(表1)。

表の通り、多くの栄養素が関わっています。つまり、「この食品を食べていればカゼを引きにくくなる。免疫力が上がる」という万能食品はありません。肉ばかりを食べて魚を食べない、野菜を食べないなど、かたよった食事のとり方を続けると、栄養不足になり免疫力が落ちてしまいます。
みなさんは、これらの食品をまんべんなく食べられているでしょうか?私は、選手の食事のとり方をみていて気になるのは、緑黄色野菜を食べる量が少なくみえます。緑黄色野菜には、ビタミンAが多く含まれています。ビタミンAは、のどや鼻の粘膜を健康に保つ働きがあります。 カゼなどのウイルスは、口や鼻から吸い込まれ、粘膜につきます。粘膜が健康な状態の時は、ウイルスが粘膜から体内に侵入できなくなり、体外へ出されたり、胃液で分解されたりします。しかし、ビタミンAが不足すると粘膜の健康が保たれなくなり、ウイルスが侵入しやすくなります。
ビタミンAは、人参、カボチャ、ピーマン、トマト、ブロッコリー、ほうれん草や小松菜などの青菜類に豊富です。しかし、緑黄色野菜は、選手の苦手な食品に挙げられやすいです。
緑黄色野菜が苦手な場合は、サラダや和え物ではなく、カレーやキムチ鍋、トマト鍋、チーズ焼き、にんにくバターソテー、味噌炒め、どんぶりなど、少し濃い味の料理に加える、スパイスを組み合わせる、肉・魚と一緒に炒めると、うま味が野菜に移り食べやすくなります。

*水分をこまめに補給しましょう
免疫力を落とさないようにするには、のどや鼻の粘膜をうるおっている状態に保つことが大切です。粘膜がうるおっていると、ウイルスが粘液の流れにのり、先ほど話した通りに取り除かれます。しかし、寒い季節は、のどや鼻の粘膜が乾燥しやすいです。寒い季節は空気が乾燥し、乾燥した空気を吸い込んでいるからです。水分補給は、運動中だけでなく、部屋にいる時も、移動中もこまめに行い、のどや鼻の粘膜を乾燥から守りましょう。
水分補給は、一度にたくさん飲むのではなく、こまめに行ってください。授業や仕事の合間、部屋で過ごすときは、1時間に1~2回を目安に補給してください。
寒い時は、冷たい飲み物ではなく、常温や温かい飲み物をとって、体を冷やさないようにしましょう。

*睡眠を十分にとりましょう
最近は、睡眠と競技力、睡眠と学力など、睡眠に関する研究が多く行われています。

図2の研究は、各睡眠時間をとっているヒトに1週間カゼのウイルスを入れ、粘液にウイルスが定着した(カゼを引いた)割合の図です。睡眠時間が短くなるほど、カゼを引く人の割合が多くなっています。宿題やテスト勉強、試合分析など、時間に追われる日もあると思いますが、十分な睡眠時間を確保して欲しいです。1日は24時間しかありません。生活を見直し、時間を有効に使って欲しいです。
また、すでに行われていると思いますが、帰宅時、食事をとる前など、石けんを使った手洗いと、うがいも行ってくださいね。

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