今年もまた新しいシーズンが始まる。中でも注目されるのが昨秋のドラフトを経て入団する1年目の選手たち。
いま改めて19年ドラフトのドキュメントをここにお届け。
幼いころから中日ファンだったという竹内龍臣(札幌創成高)は、まず入団の夢を叶え、次は一軍での活躍を目指す。
■19年ドラフトドキュメント⑨スカウトのパイプと眼力
スカウトはあらゆる人脈を生かして選手を発掘し、獲得に動く。中日が6位指名した竹内龍臣は、監督が元中日の外野手・遠田誠治氏だ。
中日・米村チーフスカウトにとって、同じ釜の飯を食った仲。調査書を出したのは中日だけだった。
「北海道・東北担当スカウトの八木(智哉)が『遠田さんご存知ですか』って聞いてくるから、『おう遠ちゃんか、久しぶりに名前聞くな』と。」
「それで練習を見に行ったら『遠田、これいいやないか』となりました。夏の地方大会でも147キロを投げて、4試合で四球もほとんどない。他球団はほぼ誰も見ていないんじゃないか」(米村チーフスカウト)
とはいえ、単につながりを優先してドラフト指名するほど甘くない。パイプが多いほど有望株の情報は入ってくる。しかし、それと指名は切り分ける。
楽天の育成4位・澤野聖悠(誉高)を担当した山田潤スカウトにも、ある思いがあった。
「少しでも引っかかることがあれば、リストから外そうかなとも思っていました」
山田スカウトにとって、誉高の矢幡真也監督は朝日大の1年後輩にあたる。学生時代、オフの日は一緒に出掛けた間柄だ。だからこそ、高校通算26本塁打を放った遊撃手の好素材をフラットな目で見極めた。
「守備はまだ粗削りな面もありますが、スイングのよさやスピードなど秘めている能力は高いです。夏の甲子園に出た後もずっと彼は練習していて、見に行くたびに太腿やお尻が大きくなっていました。」
「これだけやる気があるなら、プロで毎日野球をして水準に達し、化けて突き抜けていくイメージも描ける。見るほどに不安は消えていきました」
次回19年ドラフトドキュメント⑪「全員が成功すると思って指名している」へ続く)
(初出:【野球太郎No.033 2019ドラフト総決算&2020大展望号 (2019年11月27日発売)】)
執筆:尾関雄一朗
1984年生まれ、岐阜県出身。
新聞記者を経て、現在は東海圏のアマチュア野球を中心に取材。
多くの「隠し玉選手」を発掘している。中日新聞ウェブサイト『中日新聞プラス』でも連載中。
アマ野球関連のラジオ出演なども多数。
【書誌情報】
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公開日:2020.02.09