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西岡剛が変えた栃木ゴールデンブレーブスの「成長の速度」

Text:高村麻代

2019月4月6日、プロ野球独立リーグ・ルートインBCリーグの2019シーズンが開幕。13年目となるBCリーグは、関東信越を中心に11球団が所属し、東西に分かれて年間70試合を戦います。

今季は、栃木ゴールデンブレーブスに元ロッテ、阪神の西岡剛選手が入団し、開幕前からリーグ内のみならず、野球界の注目を集めました。昨年の村田修一選手(現・巨人コーチ)に続き、スター選手が北関東の独立リーグへ。そこは設備や待遇はNPBと比較になりませんが、「野球が好きだ!」という熱い思いを全身で感じることができます。

今回は、スタートダッシュに成功したブレーブスの4月の戦いを振り返ります。西岡選手がチームにもたらしたものとは…

当コラムでは栃木県民球団・栃木ゴールデンブレーブスを通して、NPBという大きな夢を追いかけるBCリーグの魅力をお届けします。

開幕、いきなりの猛打賞スタート

リーグ開幕戦の相手は、今季新加入の茨城アストロプラネッツ。西岡選手は1番セカンドで先発出場し、いきなり猛打賞の大活躍。茨城まで応援にかけつけたファンの期待に十二分に応え、チームは8-0で快勝しました。

翌日はホームに戻り、前年優勝の群馬ダイヤモンドペガサスとの対戦。この大事な一戦のマウンドを任されたのは、元・中日の若松駿太投手。「まっすぐが全然だめだった」という立ち上がりから3回3失点と苦戦しますが、4回以降はきっちり抑えて後続へと繋ぎました。打線はこの日も絶好調! 西岡選手の今季第1号2HRを含め14安打を集め、12-3で2連勝!西岡選手は「目指す場所があるので、満足することはないですが結果が出ていることは嬉しい」と少し笑顔を見せました。

若松駿太投手は15年に中日で10勝を挙げた。

好調な滑り出しとなった西岡選手。チーム練習も若手と一緒にしっかりこなし、その後のゲームにも先発出場していましたが、4月の後半に試合を外れた日がありました。西岡選手と球場外でも話すという外野手の高野勇太選手が「剛さんがいないからといって簡単に負けるのは絶対嫌だった。剛さん頼みは良くない。それはみんな感じていたと思う」と話した通り、この日のブレーブスは、ひと味違いました。福島レッドホープスを相手に、リードを許しながらも逆転し、8-7で粘り勝ち。寺内崇幸監督も「こういうゲームを勝ち切ることでチームが強くなる、若手の成長を感じる」と嬉しそうに語りました。

一方、当の西岡選手は「チームが勝てているのは、状態が良いということ。(若手選手には)伝えることは伝えているし、あとは相手がどう受け止めるかだと思う。自分自身も、開幕前に目指していたところに来ている。良い感じで打てているし、いろんなポジションを試すことも希望通り出来ている」と冷静に分析しました。

西岡選手はNPBで首位打者/最多安打/盗塁王を獲得

「チームが勝つことで成長の速度が変わる」

さて、2年連続でNPBを代表するスター選手を迎えたブレーブスですが、昨季と今季では勝率に大きな差が出ています。それはなぜなのか、私なりに考えてみました。

昨シーズン、村田選手はNPBに戻ることを目指しながら「栃木のファンのみなさんに1本でも多く(自らの魅力である)ホームランを見てもらいたい」と、まさに「超一流」の一振りでチームを勝利に導いてくれました。兄貴肌の村田選手に多くのアドバイスをもらってプロの世界を肌で感じ、NPBへの思いを強くした選手が多くいました。実際に、入団1年目の捕手・内山太嗣選手が育成枠1位でヤクルトへ。球団として初の「NPB選手輩出」となりました。しかし振り返ると、シーズン中の成績は東地区5チーム中、前半は4位、後半はやや調子を上げたものの3位どまり。村田選手を擁しても、優勝争いに食い込むことは出来ませんでした。

今シーズンは、苦手とする強打の群馬相手に快勝、チーム初の開幕3連勝、終盤でひっくり返すなど好ゲームばかりで正直、驚きを隠せません。何が違うのでしょうか。

寺内監督、岡田幸文コーチら新首脳陣が掲げた「動く(=走る)野球」」と、開幕から3勝負けなしの若松投手を中心に投手陣が奮起していることなどが大きな要因だと思いますが、もう一つ大きな変化は、ホーム開幕戦後に西岡選手が語った「勝利へのこだわり」にあると思うのです。

「みんなNPB目指して戦っていて、一人一人が成長していくためには、チームが勝っていかないと成長の速度が変わってくると僕は考える。栃木ゴールデンブレーブスに僕が入団した以上は、このチームが一勝でも多く出来るように、若い選手たちと僕も一生懸命、一緒に同じ方向を向いて戦っていきたい」

これまでのブレーブスは、NPBに選手を送り込むことに重きを置いて、勝利よりも選手の成長を重視した戦略が多かったように思います。ファンからは、NPBに行ってほしい気持ちと同様に、もしくはそれ以上に、目の前にいる選手たちと勝利を喜びたいという声もしばしば耳にしましたし、私も地元の応援団の一人としてもどかしさを感じることも多々ありました。

試合に出ている以上、勝ちたいと思うのは当然で、昨季も誰もが勝ちたいと思っていたはず。けれど、チームの勝利、チームへの貢献が、自分の成長=NPBに繋がると実感できていた選手は少なかったでのはないかと思います。

今季からキャプテンを務める、チーム入団2年目の谷津鷹明選手は「結果で(地元に)恩返し」を常に口にするようになり、形勢が不利な場面でも、大きな声でチームを鼓舞し続けています。「去年は村田さんがいればなんとかなる、という雰囲気があったが、今年は一人一人が変わった。自分が良ければ満足ではなく、結果(勝利)をファンのみなさんに見せていきたい。今年は勝負の年です」と頼もしい表情に変わりました。

西岡選手のサイン会があるなど、ファンサービスも積極的

ブレーブスは、9試合戦って勝率6割を超え、首位とは0.5ゲーム差(4月23日時点)。まだ「優勝」の二文字を出すのは早すぎますが、確実にチームがステージアップしたと感じます。

未完成であるからこそ、選手もチームも試合ごとに成長していく、それを見守っていくのがBCリーグの楽しみの一つかもしれません。がむしゃらな選手たちにぜひ球場へ会いにきてください。

BCリーグは今シーズン13年目,11球団で覇権を争う

※写真は特記以外は著者撮影