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V長崎、日本ハンドボールリーグ、アイリスオーヤマが議論。コロナ禍で変わるスポンサーシップとは?

スポーツのあり方がコロナ禍で変われば、スポンサーシップのあり方も変わってくる。日本のスポーツビジネスの現場をリードする各クラブ、リーグ、スポンサー企業はどのように現状を見つめ、何を見据えているのか?V・ファーレン長崎の髙田春奈社長、日本ハンドボールリーグの代表理事に着任した葦原一正氏、ベガルタ仙台のスポンサードを長く務めるアイリスオーヤマ取締役の石田敬氏が、5月に開催された『HALF TIMEカンファレンス2021』で語りあった。

クラブ、リーグ、スポンサーから登壇

スポーツ業界高峰のカンファレンス『HALF TIMEカンファレンス2021』が5月12日と13日に開催。新型コロナの影響が続き、大きく様変わりするスポーツビジネスにおいて「コロナ禍のデジタル・トランスフォーメーション(DX)」をテーマに、オンラインで開催された。

初日のセッションの一つが「コロナ禍におけるパートナーアクティベーションへの取り組み」。

前Bリーグ事務局長で4月から日本ハンドボールリーグへ「移籍」した葦原一正代表理事氏、昨年1月に前任の髙田明氏から代表を継ぐこととなったV・ファーレン長崎代表取締役社長の髙田春奈氏、ベガルタ仙台のスポンサー企業であるアイリスオーヤマ取締役の石田敬氏が登壇。

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社の森松誠二氏をモデレーターに、クラブ、リーグ、スポンサーのそれぞれの見地から議論が展開された。

スポンサーシップはどう変わってきたか?

セッション最初のトピックは「スポンサーシップやパートナーシップの広がり」。パンデミックという未曾有の事態が起こり、スポーツを取り巻く環境は激変。スポーツ団体とスポンサー企業の関係性はこれまでも変遷があったが、これを加速させた感さえある。

モデレーターの森松氏から「スポンサーシップの変化をどう感じ、取り組んでいるか」と投げ掛けられると、最初に髙田氏が答えた。

「長崎の文化や歴史を理解した上で、県民の方々が何を求めているのかを考えてコミュニケーションを取ることが重要だと感じています。企業様とはお金だけの関係だと長続きしません。地域の課題を一緒に解決していくことがより大切だとコロナ禍を通して実感しました」

このスポンサーシップの遍歴をわかりやすく解説したのが葦原氏。同氏は見返りを求めない協賛型を第1世代、見返りを求める広告露出型を第2世代、「共創」による事業創造や課題解決を求めるスポンサードを第4世代と定義した。

そして現在は「第4世代」が生まれてきていると、次のように語る。

「第4世代型では人材採用の観点でスポンサーをする意味合いも大きい。人口減で優秀人材の取り合いになる中、スポンサーだからというのが入社の決め手になることもある。スポンサーの目的は色々。コンテンツホルダー側も、一つに決めずに様々な機能があることを提案することも大切だと感じます」

これに対し、Jリーグ・ベガルタ仙台のスポンサーを長く務めるアイリスオーヤマの石田氏は、別の見地からも考えを寄せた。

「スポンサーを続けていると、やめたときの逆効果を考えることもあります。もしやめたら『あの企業、大丈夫なのかな?』と思われてしまうかもしれない(笑)。ですので、やるからには長く、意義のあるテーマを考えていく。お互いに助け合う、パートナーシップの発想が必要になってくると思います」

クラブと企業の20年を超えるパートナーシップが、この考え方に裏打ちされていることが明かされた。

デジタルで前進するスポーツ現場

続いてのトピックは「スポーツ分野におけるデジタルの進歩」。スタジアムを中心とした興行ビジネス、また試合や選手というコンテンツを保有するIP(著作権)ビジネスという側面から考えれば、スポーツは様々な産業にわたる、デジタル技術の実装の場にもある。

森松氏から「デジタルの観点で検討していることは?」と投げ掛けられると、石田氏が答えた。日用品を扱うアイリスオーヤマでは、購買よりも手前の認知の獲得、そしてそこから派生する事業への影響を示唆した。

「広告を見たからといって購買につながるパーセンテージは高くありません。ただし、膨大なオーディエンスに広告を見てもらえるため、新しいビジネスのチャンスになりうることについては、とても興味深く感じます」

クラブの視点として、髙田氏はこれまでの取り組みを振り返ると共に、先のビジョンも示す。長崎ではジャパネットグループによる新設のスタジアム・アリーナを中心としたまちづくり計画である「長崎スタジアムシティプロジェクト」が進んでいる。開業は2024年の予定だ。

「いきなり最先端のデジタルというよりも、コロナ禍では今あるコンテンツに集中して1年間やってきました。新スタジアムもデジタルが先行するのではなく、中身が伴うことで観に行きたいと感じる方が増えることが大事だろうと思います」

デジタルというと最新・最先端テクノロジーばかりが注目されがちだが、ファンが本当に求める技術を見極めることも重要。葦原氏はプロ野球やBリーグといった過去の経験も振り返りながら、今後について言及した。

「VRなどの最先端ハイテクノロジーを取り入れることをスポーツ界の色々なところでトライしているが、あまりうまく進んでいる認識はありません。10%のコアファンのために様々なことを探究していくよりも、その他の90%のライトファンに向けて、デジタルを駆使してコミュニケーションをはじめサービスの多様化を進めることも大切ではないか」

コンテンツホルダーとスポンサー、これからの関係性

最後のトピックは「スポンサーとコンテンツホルダーの関係」。スポンサーシップをスポーツ団体とスポンサー企業両方にとって実りあるものにするために、その関係性はどうあるべきか。またどのような観点からセールスが始められるべきなのか。

森松氏からコンテンツホルダー目線での考えを聞かれると、まず葦原氏がチームとリーグ両方で働いた経験から、それらを比較して答えた。

「スポンサーセールスは、チームは地元を回って汗をかくスタイルが主流ですので、よりコミュニケーションが求められます。一方リーグ(のスポンサード)は競争環境が作られ、権利の取り合いになることが多い。したがって、権利的知識が深く、論理的に物事を整理していくことが求められます」

V・ファーレン長崎の髙田氏は、クラブのアプローチとそれを裏付ける哲学を明かしてくれた。

「相手企業それぞれへの価値を考える必要があります。企業を知らずにセールスをするのは失礼なので、しっかり調査をして、よかったと思ってもらえるようにする。企業とクラブは対等な関係性で、お互いに本当に価値があることをやっていかないと長続きしません」

最後には石田氏が、スポンサーする企業側から視点を提供して、締め括った。

「スポンサードは投資として考えていますので、逆にこちらからお願いをすることも多い。あるチームはポイント制度でスポンサーシップを管理していて、活動ごとのポイントをスポンサーが自由に使ってアクティベーションをしていると聞きます。お互いの求めるところをカスタマイズしていくことが、投資をする側としてはやりやすいですね」

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