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翻訳・通訳から欧州「ファントークン」企業の日本市場担当へ。Chiliz元木佑輔さん「エンタメでローカルスポーツを盛り上げたい」

スポーツビジネスの現場リーダーに、これまでのキャリアと現職について伺う連載企画。今回は、世界中のプロスポーツチームが導入する「ファントークン」の開発を手がけるChiliz(チリーズ)で、日本市場を担当する元木佑輔(もとき・ゆうすけ)さんに、翻訳・通訳から始まったビジネスキャリアを伺いました。(聞き手はHALF TIME編集部の横井良昭)

注目のトークン企業「Chiliz」で日本市場担当

Chilizで日本市場を担当する元木佑輔さん(右)

――FCバルセロナ、PSG、ユベントスをはじめ多くのスポーツチームと提携する、今最も注目されるブロックチェーン企業「Chiliz」。本社は海外ですが、元木さんはどのようなお仕事をされているのですか。

Chilizには2019年夏に入社して唯一の日本人として日本市場を担当しています。業務のひとつは広報で、日本向けのプレスリリースの作成・配信やメディアとのリレーションなど。NFTから暗号資産、ブロックチェーンに関してまでインタビューを受けさせていただいています。

もうひとつはマーケティングと事業開発。アプリのローカライゼーションを行いながら、国内の暗号資産の取引所やスポーツチームとの連携も行っています。

――Chilizに入社するまではどういった経歴、キャリアだったのでしょうか?

宮城県仙台市で育ち、小学校の時は本格的にサッカーをしていました。インターナショナルスクールに転入した中学生以降は遊び感覚で楽しみながら、サッカーはもちろん、野球やバレーボール、ラグビーの観戦もしましたね。大学生時代には音楽活動にも取り組みましたが、それが現在のエンタメに対する強い意識につながっています。

新卒では、英語力を活かして翻訳・通訳、ローカライズ、インバウンド関連の事業を行っている地元の会社に就職しました。当時は東日本大震災直後で、海外の新聞社からの原発周辺地域の住民にインタビューしたいといったリクエストも多かったですね。

今でも、翻訳・通訳をやっていた経験は活きています。いざ仕事を始めた時に、現地の人と円滑なコミュニケーション取れるかどうかは大事ですから。海外に憧れる若い人は多いと思うんですけど、外国人って実はシビアに見るんですよ。同僚だって最初は優しいけど、いつまでも静かなままだと人間関係もうまくいかないので。

ブロックチェーンを通じてスポーツ業界と関わるように

――新卒で就職した会社を出て、ブロックチェーンにどっぷり浸かっていくことになります。

2017年末に、結婚して子どもが産まれるのを機にフリーランスとして仕事を始めたんです。ちょうどその時期は、ビットコインと仮想通貨の「バブル」がありました。国内外のブロックチェーンプロジェクトの翻訳案件や関係者を紹介されながら、ブロックチェーンを初めて勉強して面白いと感じたんです。

友人からChilizを紹介されたのは2019年の春頃でした。本社がマルタ共和国と聞いたんですが、「マルタってどこだ?」というような状態で、地図で調べてから人事と面接しましたね(笑)。

当時のChilizはスポーツにかなり重点を置いていたのですが、将来的にはK-POPや米英のポップカルチャーをターゲットとしたエンタメ分野にも進出を考えているという話を聞いて、エンタメ志向の自分に合っていると思いました。

面白そうだというのと将来性に惹かれました。当時すでにユべントスやPSGとの提携がほとんど確定していて、ポテンシャルを感じましたから。

――元木さんにとっては、スポーツに深く関るきっかけにもなりました。

ブロックチェーンや暗号資産の仕事を数多く受ける中で、これからのお金のあり方を考えることが多くなりました。地元・仙台市のプロスポーツチームはいわゆる中堅の下くらいのチームが多く、資金的にはあまり潤っていなかった。でも暗号資産の仕事や勉強をする中で「お金」という面から、スポーツを通して地域活性化につなげられないかと考え始めましたね。

東北で一番大きな都市である仙台でさえ、スポーツではまだまだ改善の余地がある。いわゆる「スポーツ業界」にいなかった僕でもそう感じていたので、東北の他の都市はなおさらだとも思います。

「スポーツは、人間が人間らしく生きるためのもの」

――スポーツで地域活性化とも仰いました。元木さんが考える、スポーツの価値や魅力はなんだと思いますか?

最近は世界全体が暗いニュースに包まれていますよね。それでも日本代表が勝ったり、自分が応援しているチームが優勝したりすれば、嬉しい気持ちになったり、ストレスが解消されたりする。解消されなくても、スポーツを見ているときだけは無心になれるというか、そういった説明できない何かがスポーツにはあると思っています。

エンタメという意味では、僕自身が好きな音楽、特にバンドにも共通すると思います。好きなバンドを見に行くと、普段嫌な事があってもその時間は楽しくて忘れることができる。日常のストレスをいかに減らすかはすごく大事ですし、社会が健全になるために、一人ひとりの心が健全に保たれているのは重要です。

スポーツは純粋に心を健全にできるコンテンツのひとつで、良いことしかないですよね。観戦しても楽しいし、自分でやっても楽しくて、しかも健康にもつながりますから。

――コロナ禍で社会も大きく変わりました。

オンラインが発達して人と人とのリアルな関わりが減ると、誰にも会わなかったり、何も買わなくなっちゃいますよね。購買意欲が下がるだけでなく、社会全体がすごく元気がなくなってしまう。

そんな中で、スポーツは人間が人間らしく生きるためのものだと個人的には思います。ひとりでできるスポーツもありますが、ほとんどのスポーツは人との関わりをつくるという新しい役割を果たせるんじゃないかと思います。

――今後、スポーツ業界でどのような取り組みをしていきたいですか?

僕としては、地域経済や地域のスポーツをどう盛り上げていくのかに注力していきたいと思っています。地方はエンタメの過疎化も進んでいると思うので、地域のハブになるスポーツや音楽では、ブロックチェーン技術を通して地域経済を活気づけていきたいと考えています。

プロ野球選手やサッカー選手は、子どもたちの夢ですよね。僕は子どもが2人いるので強く思うんですが、子どもには可能性しかありません。子どもたちの夢を叶えられるように、地元のスポーツ経済をどんどん盛り上げていく。そのために、ファントークンのような新しいサービスを通して収益を上げていく。草の根活動にも近いですが、この理想を掲げて今後も動いていきたいですね。

初出=「HALF TIMEマガジン」21年12月29日掲載(数字や日程は初出時のもの)
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