土俵際の東京五輪 ワクチンも届かず【二宮清純コラム スポーツの嵐】

世論では「中止」が多数
「もう(五輪を)開催するなら無観客しかないだろう」
東京五輪・パラリンピック開催まで60日を切った今、そんな声が大会組織委員会関係者から出始めている。
この2月、辞任した森喜朗会長の後任として新会長に就任した橋本聖子は、観客数について「4月に方向性を決める」と期限を区切った。
3月に私が行ったインタビューでは「今、プロ野球もJリーグも、他のいろいろな競技の世界大会も観客を入れて、やってきて、医学的、科学的な知見を踏まえながら検証しています」(スポニチ3月22日付け)と語っていた。
ところが新型コロナウイルスの第4波が押し寄せ、4月25日、東京に3回目の緊急事態宣言が発出されるや状況は一変した。当初は5月11日までの予定だったが、ウイルスの勢いは衰えず、月末まで延長された。
観客を入れるか入れないか、あるいはどの程度入れるか目処が立たないことには、必要とする医療従事者やボランティアの人数も決められない。
現在、組織委は「6月に判断する」としているが、「それで間に合うのか……」と不安の声も上がるのも無理はない。
「無観客になれば、国民が一番心配している大会に関わる医療スタッフの数を減らすことができる。決定の時期が遅れれば遅れるほど、事実上無観客開催に近付いているということだよ」(組織委幹部)
ところで「無観客」という言葉を、日本のメディアの前で初めて使ったIOC委員は世界陸連会長のセバスチャン・コーである。
1月末、TBSのインタビューに「無観客なら受け入れられる」と語った。すぐさまIOCトーマス・バッハ会長も「東京大会の最優先課題は安全」と呼応した。
IOCにとっては総収入の約7割を占める放映権料を確保するのが最優先課題。組織委の懐に入るおよそ900億円分のチケットをどうするかは、あくまでも日本側の問題なのだ。
組織委としても、簡単に引き下がるわけにはいかない。そこで「半分でもいいから観客を入れたい」(前出幹部)と時間稼ぎをしていたのだが、もうタイムリミットである。
頼みの綱はワクチンだが、政府が約束した「6月までに国民に必要な量の確保」(坂井学官房副長官)は間に合いそうもない。
コロナ対策が後手後手に回る中、最新の世論調査(読売新聞社)では「中止」が59%と約6割を占めた。果たしてIOCに日本国民の声は届いているのか……。
初出=週刊漫画ゴラク2021年5月21日発売号
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