「まだ答えは出ていない」
壮絶な打撃戦の末に9回TKO負けを喫した前WBA世界ミドル級スーパー王者・村田諒太の進退に注目が集まっている。
試合前、村田はNHK「クローズアップ現代」のインタビューで、「負けたら間違いなく引退。勝っても続ける選択肢はない」と語っていた。
4月9日、さいたまスーパーアリーナ。IBF世界ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との2団体王座統一戦は、かつて「パウンド・フォー・パウンド」(階級を超えた強さを示すランキング)で1位に選ばれたこともあるゴロフキンに軍配が上がった。
世界の俊英たちが集うミドル級、日本人にとってはヘビー級に次ぐ難関クラスで2度までも王座に就き、しかもボクシング史に名を刻むレジェンドをして「ギリギリの試合展開だった」と言わしめた村田の健闘ぶりは、どれだけ称えても称え切れない。
試合後の記者会見では「総合力で一枚も二枚も向こうが上だった」と彼我の実力差を認めた上で、「2、3ラウンドは“ボディが効いたな”と感じた瞬間もあった」と手応えも口にした。
村田はゴロフキン戦まで、一度もダウンを喫したことがなかった。堅固なガードが決定打を許さなかったのだ。
だが、ゴロフキンのパンチは鉄壁のガードを割るように入ってきた。これは本人にとって初めての経験だったのではないか。
「(ゴロフキンは)角度を変えてブロックの間からパンチを入れてくる。強いというより巧いというイメージ。対して僕はワンツー、そしてワンツー・ストレート。技術の幅で負けていた」
負けたら間違いなく引退。そう口にしていた村田だが、試合後は、「このあたりが本当はやめ時だが、まだ答えは出ていない」と微妙な言い回しに変わった。
ジムにはWBAのヒルベルト・メンドサ会長から激励の手紙が届いた。それは再起を熱望する内容だった。
<ムハマド・アリ、マイク・タイソンら多くの偉大なボクサーが負けた後、再び立ち上がってきた。敗北を乗り越え、より成長できる力が我々にはある。偉大なボクサーに敗れたが、どんな困難にも立ち向かえる強さと決意を持って戻ってくると確信している>
試合後、村田は「尊敬の証」としてゴロフキンからチャパンという民族衣装を贈られた。それを返すため、再びリングに上がる――。多くのファンは、そんなドラマを夢想しているに違いない。
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初出=週刊漫画ゴラク2022年4月27日発売号