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奥川との二者択一。中日が石川昂弥を1位指名した理由とは?

Text:尾関雄一朗

今年もまた新しいシーズンが始まる。注目されるのは入団一年目の選手たち。
いま改めて19年ドラフトのドキュメントをここにお届けする。

ドラフトドキュメント①(別タブで開きます)

■19年ドラフトドキュメント②:オリックス石川1位指名というサプライズ

オリックスの1位指名は石川昂弥(東邦)。ドラフトの生中継を見ていた本人サイドも一瞬、時が
止まった。「中日とソフトバンクからは、1
位で指名すると前もって電話があったんで
す。オリックスからはなかったので、驚きま
したね」(東邦高・森田泰弘監督)
通常、ドラフト指名する可能性が高まれば、
担当スカウトは事前に学校側へ連絡を入れる
ことが多い。おおよその指名順位を伝え、同
時に他球団からの接触を聞き出す。

オリックスはドラフト当日に1位指名を決
めた。石川を担当する由田慎太郎スカウトは
「僕は今年でスカウト7年目ですが、担当選
手が入札で指名されるのは初めてでした。(球
団首脳らの話し合いで)決まった後、知らさ
れました」と言う。球団の戦略で、東邦高へ
の予告電話は自重した。

オリックスの石川指名は「ないと思ってい
ました」(ヤクルト:橿渕スカウトデスク)という声が
聞かれる一方、可能性を感じていた球団もあ
る。中日・米村明チーフスカウトは「ドラフ
トの日が近づく中、オリックスは東邦高のグ
ラウンドへよく来ていたようです」と想定に
入れていた。

オリックスが1位指名した瞬間、驚いたような表情を浮かべた石川昂弥(東邦高/写 真左)と、愛弟子の運命の瞬間に立ち会った森田泰弘監督。最終的に3球団が競 合する意外な展開に

中日はドラフト前日、石川の指名を公言し
た。奥川の指名が確実視されていたが、一転
して地元のスラッガーを選んだ。米村チーフ
スカウトは悩み抜いた。
「石川はU -18ワールドカップでの活躍で評
価が上がり、ドラフト2位で残ることは10
0パーセントなくなりました。もし奥川で抽
選を外したとき、外れ1位で石川が重複した
り、すでに石川が残っていないとなると、両
方とも獲れない事態になる。」
「こうなると最悪です。考えるほどに追い込まれて、10月は寝
られなかったです。守りに入るわけではない
ですが、どちらかは必ず獲らなければ。そう
考えたとき、地元・名古屋を外すわけにはい
かないし、今年のウチは若いピッチャーが台
頭したので、石川でいこうじゃないかと」

公言することで、他球団への牽制になる。
楽天も石川と佐々木を天秤にかけたが、中日
との競合を嫌ったとみられる。どのみち競合
になるならと、佐々木へ進んだ。
「石川の雲行きも怪しくなってきましたから。
確実に他球団もくるなら公表しましょう、と。
前日のスカウト会議もほとんど石川のことだ
けに終始しました」(米村チーフスカウト)
石川にはソフトバンクも札を入れた。米村
チーフスカウトは「ノーマーク。(オリックス
との)2分の1のはずが……」と頭を抱えた。
対して、橿渕スカウトデスクや由田スカウト
のように「ソフトバンクは次世代の右バッタ
ーがほしいはず」と読んでいた筋もあった。

抽選の結果、中日・与田剛監督が金の卵を
射止めた。4球団が競合した前年の根尾昂に
続く快挙だ。「あれだけ悩んだのが報われた。
神様はいるんだ。そう思いました」(米村チ
ーフスカウト)

次回19年ドラフトドキュメント③「森下ではなく森だった」へ続く
ドラフトドキュメント③(別タブで開きます)
(初出:【野球太郎No.033 2019ドラフト総決算&2020大展望号 (2019年11月27日発売)】)

執筆:尾関雄一朗
1984年生まれ、岐阜県出身。
新聞記者を経て、現在は東海圏のアマチュア野球を中心に取材。
多くの「隠し玉選手」を発掘している。中日新聞ウェブサイト『中日新聞プラス』でも連載中。
アマ野球関連のラジオ出演なども多数。

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