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「日本を代表するエースに」奥川恭伸が叶えた4つの目標とは?

Text:大利実

中学で全国優勝、甲子園で快投披露、そして3球団が競合したドラフト1位、と聞く
とエリート街道を突き進んできたように思えるだろう。
しかし、小学生時代からの盟友
捕手・山瀬慎之助(星稜高→巨人5位)をはじめ、その時々の関係者の証言を聞くと、
さまざまな壁を乗り越えてきたことがわかる。
奥川恭伸のドラフト1位までの道のりをあ
らためて辿ると、本人が描くプロ入り後の青写真にも期待せずにはいられない──

ドラフトドキュメント①奥川恭伸(別タブで開きます)

■奥川恭伸「セ界から世界へ」①奥川が叶えた4つの目標 

 星稜高校の公式ホームページには、「奥川くんに聞く50のこと」と題したQ&Aが掲載
されている。
これを最初に読んだとき、「奥川、すげぇな!」と心の中で叫びそうになった。
目標達成力の高さに、驚かされたからだ。

Q.中学生の頃に思い描いていた高校生の自分になれている?
「あの頃に描いていた自分の姿より、結構順調に来ているかな、と思っています。中学生の頃、高校生になって達成したかったことが4つあって、それがひとつひとつ達成できているので、あの頃には想像できなかった高校生活を今、順調に送っていると思います」

Q.高校生になって達成したかった4つの目標とは?
「1つ目は甲子園に出たい。2つ目は高校生のうちに150キロを投げたい。3つ目はU18に選ばれたい。4つ目はプロ野球選手になりたい、です。最後のひとつは、今年(19年)の秋に達成できるように、今頑張っています」

奥川恭伸。184センチ82キロ、右投右打。2001(平成13)年4月16日、石川県生まれ。
7歳上の兄がいたことから幼少より野球に親しむ。宇ノ気小3年で「宇ノ気ブルーサンダー」に入団し、本格的に野球を始める。この頃より現在もバッテリーを組む山瀬慎之介捕手とのコンビにより県内で名を馳せた。
宇ノ気中では3年夏の第38回全国中学校軟式野球大会(全中)で優勝。星稜高では1年からベンチ入りし、春夏4度甲子園出場。今夏は甲子園準優勝し、2年連続侍ジャパンU-18代表入り果たした。最速154キロのストレートだけでなく、スライダー、カーブ、フォークの変化球も精度、キレを備えた世代トップを走る右腕。
19年のドラフト会議で3球団競合の末、ヤクルトが交渉権を獲得。

高津監督は「日本代表するエースに」と期待

19年10月17日に行われたドラフト会議で、奥川恭伸は3球団から1位指名を受け、抽選の結果、ヤクルトが交渉権を獲得した。
交渉権確定のクジを引き当てた高津臣吾新監督は「ヤクルトのエースはもちろん、日本を代表するエースになってほしい」「即戦力として、今年のピッチャーでは一番」と高い賛辞を贈った。

小学2年生の冬に宇ノ気ブルーサンダーで野球をはじめ、かほく市立宇ノ気中では山瀬慎之助(星稜高→巨人5位)とのバッテリーで、全国中学校軟式野球大会(以降、全中)優勝。
星稜高に進んでからは春夏甲子園に4度出場し、3年夏には準優勝を果たした。マウンド上で見せる笑顔と、時折見せる涙に、心をわしづかみにされた人も多いのではないか。
ストレート、スライダー、カーブ、フォークといずれの球種も質が高く、ピッチングの攻め幅が広い。ストレートは平均で140キロ台中盤をマークし、最速は154キロを記録する。3年春夏の甲子園では計59回1/3を投げて、奪三振78、与四死球19、自責7(防御率1.06)と抜群の安定感を見せた。
夏の智辯和歌山高戦では、延長14回をひとりで投げ抜き、被安打3、奪三振23、自責0と、甲子園史に残る快投を披露した。
なぜ、これほどまでのピッチングができるのか。小学3年からボールを受け続けている山瀬が、キャッチャーならではの視点で表現してくれた。
「バッターと勝負ができるのが、奥川のいいところ。自分の力を最大限に出すこともあれば、最小限の力で抑えることもある。」
「『このバッターなら、このぐらいの力でいい』というのがわかっています。同じスライダーのサインでも、バッターを見て、球速を変えることができます」
力の入れどころをよくわかっているピッチャーである。

ドラフト1位の評価を得るまでに、どのような野球人生を送ってきたのか。19年9月に聞いた奥川へのインタビューと、奥川の成長に関わった人たちの言葉を交えながら、その歩みを追ってみたい。

次回、奥川恭伸②「ピッチャー・奥川誕生」へ続く
(初出:【野球太郎No.033 2019ドラフト総決算&2020大展望号 (2019年11月27日発売)】)

執筆:大利実
大利実(おおとし・みのる)1977年生まれ、神奈川県出身。中学野球ライターの草分け的存在。『メルマガでしか読めない中学野球』を月3回配信している。出身地・神奈川の高校野球もライフワーク。『高校野球継投論』(竹書房)が好評発売中。

【書誌情報】
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