左肩腱板(けんばん)炎からの回復中の中日・石川昂弥。高3時のセンバツでは投手も務めた。その高い身体能力とは?
■石川昂弥④:投手もこなした高い能力
センバツでは背番号1をつけ、エースとしても優勝の原動力になった。5試合をほぼ一人で投げ抜
き、計5失点でまとめた。2年秋、投手力が不安視された新チームで、指揮官が白羽の矢を立てた。
「石川は中学でピッチャーもやっていたし、肩も強いので。2年の春頃にもピッチャーとして試した
けど、その時はだめだった。余分なことに神経を使わせて、野手としてのプレーを狂わせたくなかっ
たし。」
「2年秋には、ピッチャーもできるぐらいになっていた。石川がピッチャーじゃなければ、センバツ優勝どころか県大会で負けていたかもしれない」
ただ、その投球スタイルは、強肩や体格のイメージとは裏腹に、130キロ台のストレートで丹念
にコースを突いて打たせて取るもの。力を入れれば140キロ台も出るが、色気を出さず制球を重視
した。
状態により上手投げとスリークオーターを使い分けた。本人は「最初はスリークオーターの方が投げやすかった。サードからの送球は横からだし、送球のコントロールには自信があるので。」
「投げているうちにだんだんピッチャーらしくなって、上からも投げられるようになってきた。2年秋の東海大会開幕後にピッチングがよくなって、自信をもって試合に臨めるようになった」と振り返る。
センバツでの活躍は〝二刀流″と騒がれたが、投手としての将来は大会期間中から自身が否定して
いる。「ピッチャーと〝して抑えるのは楽しい」としながらも、「自分は野手だと思っている」ときっぱり。己の適性を冷静に自覚していた。
「なんで打たれないんだろう、とも思っていた」と冗談気味に話す。
守備や走塁の能力も高い。大型の割に動きがよく、プロでも三塁を任せられそうな点で評価が上が
った。「中学まではショートを守っていたので、捕るのも投げるのも苦手ではない」と言う。投手と
して臨んだセンバツ決勝では初回、送りバントの処理で二塁へ送球し、見事に補殺。併殺でピンチ
の芽を摘み取った。
「バントしてくると思ったらど真ん中に軽く投げて、予めマウンドから駆け下りて捕球し、刺す」と簡単に言うが、それが実際にできるからすごい。
脚力は50メートル6秒2。「足は速くはないけど、塁に出たら盗塁しているし、アウトになった記憶
もほぼない」と話す。
次回、「石川昂弥:⑤ 今“彼”を打つことが出来るか?」へ続く
(初出:【野球太郎No.033 2019ドラフト総決算&2020大展望号 (2019年11月27日発売)】)
取材・文:尾関雄一朗
1984年生まれ、岐阜県出身。
新聞記者を経て、現在は東海圏のアマチュア野球を中心に取材。
多くの「隠し玉選手」を発掘している。中日新聞ウェブサイト『中日新聞プラス』でも連載中。
アマ野球関連のラジオ出演なども多数。
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公開日:2020.02.24