完成度は抜群!大崩れしない実戦派ドラ1ルーキー!下村海翔
昨季、38年ぶりの日本一に輝いた阪神タイガース。球団史上初の連覇に挑む2024年ですが、その力になってくれそうな“新戦力”も加入しています。
中でも注目なのがドラフト1位ルーキーの下村海翔投手。青山学院大では常廣羽也斗投手(広島1位)とともにチームを支え、4年春には33季ぶりの優勝の立役者に。さらに6月に開催された大学野球選手権では準決勝の富士大戦で6回2失点と好投して決勝進出を手繰り寄せ、優勝に貢献しました。
元チームメイトの常廣投手は「大学ナンバーワン投手」の呼び声も高いですが、下村投手も負けてはいません。174センチと野球選手としては小柄ながら、ストレートの最速は155キロ。さらに140キロ前後のカットボールやフォークの精度も高く、調子の良し悪しに関わらずゲームを“作る”能力に長けています。「大崩れしない」「試合をまとめる」という点で言えば、常廣投手を凌ぐと言っていいでしょう。
また、昨年行われた日米大学野球選手権では計11イニングを投げて防御率0.82と大活躍を見せ、MVPに輝くなど大舞台での勝負度胸も“タイガース向き”と言っていいかもしれません。
球団から与えられた背番号19は、一昨年まで藤浪晋太郎投手(メッツ)が背負った番号ですが、投手のタイプとしては真逆。前述のとおり大崩れすることは滅多になく、どんな場面でもチームの期待に応えてくれそうです。
小柄ながら“勝てる投手”という意味では、ロッテの美馬学投手や、無駄のないフォームは根尾昂投手(中日)を彷彿とさせます。
近年、プロ野球界のトレンドはいわゆる“素材型”と呼ばれるような選手で、そもそもフレーム(体格や骨格)に恵まれ、150キロを超えるボールをバンバン投げるロマン溢れるタイプが重宝される傾向にあります。大谷翔平選手(ドジャース)や佐々木朗希投手(ロッテ)などは、まさに“素材型”がプロで大成した、もしくは大成しつつある典型と言えるでしょう。
しかし、下村投手は少し違います。前述のとおり決して体格には恵まれていませんが、それを補って余りある完成度の高さを誇ります。プロの投手として必要な技術、メンタルはすでに備わっていると言ってもよく、逆にここからプロでボールそのものにさらなる“凄み”が出てくれば、一気に飛躍することも十分ありえるはずです。
今春行われているキャンプは二軍スタートですが、その点もむしろプラスと考えて良さそうです。「ドラ1ルーキー」で、しかも大卒となれば周囲はどうしても“即戦力”を期待しがちですが、今の阪神にはルーキーに頼らずとも12球団トップレベルの層を誇る投手陣がいます。
その意味で、第1クールからいきなり飛ばすのではなく、プロの環境や打者に慣れる猶予を与えられたと考えることもできるからです。
昨季のNPB王者であり、12球団随一の層を誇る阪神タイガースという球団において、たとえ「ドラ1」であっても開幕一軍を掴むことは至難の業。それでも、キャンプ、オープン戦とプロに順応することができれば――。そんな期待を抱かせてくれる投手なのは間違いありません。
適正的には先発、リリーフどちらもこなせそうですが、先発であればまずはローテの5~6番手、リリーフであれば6~7回あたりを任せられる。そんなプロ1年目の活躍も描けます。
また、大学時代からのトレードマークでもある「緑のグラブ」はプロでも継続。あまり見ない色なので、活躍すればこの「緑グラブ」の注目度も増すかもしれません。
将来的には先発ローテの中心やセットアッパー、クローザーまで――。無限の可能性を秘めた下村海翔投手に、ぜひ注目してみてください。