女子野球選手にもっと「選択肢」を――。
女子野球選手が「現役」を長く続けるのは、男子のそれよりも困難だ。
競技人口の増加に伴い、近年は全国の高校で女子野球部が相次いで創部されるなど、プレーする場は少しずつ増えてはいる。
それでも、まだまだ受け皿は足りない。そんな現状を身をもって体験し「環境を理由に野球をあきらめる女子選手を、少しでも減らしたい」と語るのが、今季創設された埼玉西武ライオンズ・レディースに所属する山崎まり選手だ。
山崎は昨季、7年間所属した女子プロ野球を退団。プロ選手としてのキャリアに区切りをつけ、新たなスタートを切っている。
「退団が決まって、一瞬だけ『引退』が頭をよぎったのも事実です。ただ、昨季はキャリアハイの2本の柵越えホームランを打てたり、肉体的にも技術的にも、まだまだやれるという手ごたえがありました。女子野球の世界にはプレーする場がなくて引退せざるを得ない選手が大勢います。だからこそ、私は環境を理由に辞めたくなかった。現役を引退するのは『体と技術が限界に達したとき』にしたい。そんなとき、ライオンズ・レディースができるという話を聞いて、セレクションを受けることにしたんです」
プレーする場さえあれば
2019年、女子プロ野球・埼玉アストライアに所属した山崎の打撃成績は60試合出場、打率.267、2本塁打、21打点。「こだわりがある」と語る長打力は健在で、プレーする場さえあれば、「まだやれる」という自信もあった。
もちろん、そんな自信と「野球をやりたい」という強い意志があってこその現役続行だったが、そこには自身だけでなく今、野球をプレーするたくさんの後輩の存在も影響している。
「今、野球をプレーしている女子選手は、なかなか目標を持ちにくいのが現実です。五輪競技でもないし、プロもありますが全員がそこを目指しているかというと決してそうではない。私自身がプロをやめて、クラブチームのライオンズ・レディースでプレーすることで、女子野球にもたくさんの選択肢があるんだよ、ということを示したい。そうすれば、野球を続けてくれる女子選手も増えると思うんです」
女子野球には、もっと選択肢があっていい――。
身をもってそれを体現する山崎まりは、「体と技術が限界を迎えるまで」、これからも女子野球選手としてプレーを続ける。
公開日:2020.11.05