2021年シーズン。リーグ優勝・日本一へ向け死闘を繰り広げる千葉ロッテマリーンズ。その指揮官・井口資仁は、これまで監督としてチームを率いる上で、どんな思いを抱いていたのか。
開幕前、3月に上梓された書籍『もう下剋上とは言わせない~勝利へ導くチーム改革~』からその一部を抜粋してお届けする。
現役最後の打席で同点本塁打
そして・・・
「一軍監督の職を受けてくれないだろうか?」
2017年、僕は21年間のプロ野球選手生活に終止符を打った。
開幕前から「この年限りで……」と心に決めて臨んだラストシーズン。6月には記者会見を開き現役を退く旨を正式発表。シーズン終了間際の9月24日には、本拠地・ZOZOマリンスタジアムで引退試合を行ってもらった。
千葉ロッテマリーンズ球団から、監督のオファーが届いたのは、その引退試合の直後のことだった。
マリーンズファンの方は憶えてくれているかもしれないが、その引退試合は僕にとって忘れることのできない劇的な展開となった。2点差を追う9回に回ってきた現役生活最後の打席で同点本塁打。延長戦の末にチームはサヨナラ勝ち。
現在でも時々、当時のシーンを思い起こすことがあるくらい、印象深い思い出となっている。
引退試合終了直後は、正直なところもう少しその余韻に浸っていたい気分だったが、球団からの突然のオファーに、感傷ムードは一気に吹き飛び、シビアな現実世界に引き戻された。
マリーンズ一軍監督就任のオファーを受けるのか?
僕はいきなり、とても大きな決断を下さなければならない立場になった。
引退試合を迎える時期まで、引退後にどのような身の振り方をするのか……僕自身がどのような進路に向かうのか、漠然と頭の中では描いていたが、正式には何も決まっていなかった。
解説者や評論家としてマリーンズ以外のチームも含めすべての球団を現場の外から見てみるのも面白そうだ――。
選手としてやり切った思いがあるので、とりあえず1、2年は野球から離れてみるのも、良い休息と経験になるかもしれない――。
そんないくつかの進路候補の中で、自分が一番強く思い描いていたのは米国へ渡っての指導者修行という道だった。
ーー次回「監督就任へのいきさつ.2」へ続く
出典:『もう下剋上とは言わせない~勝利へ導くチーム改革~』著/井口資仁 日本文芸社刊
記事内容は21年3月の書籍出版時点のもの。
書籍情報
『もう下剋上とは言わせない~勝利へ導くチーム改革~』
著者:井口資仁 日本文芸社刊
井口監督が目指す常勝チームの姿とは?
現役時代、大リーガーとしてワールドシリーズ制覇に貢献した千葉ロッテマリーンズ井口監督の改革と手腕に迫る。
ロッテは日本代表メンバーが選手にいないにも関わらず、2020年シーズン、2位を獲得した。
コロナ禍にも見舞われ、若手主体の戦いを余儀なくされた裏で、いったい井口監督は何を実行していたのか?
監督就任以来実行してきたコーチングスタッフの引き抜き、球場施設の整備・変更、練習内容の充実、選手の体調管理、フロントへの提言、ドラフトへの要望、若手の育成指導、ミーティングの進め方、試合分析などを完全網羅する。
公開日:2021.10.22