歳をとると身体が発する臭いも変わる
体臭とは、汗や皮脂などの分泌物と皮膚常在菌の作用によって発症する臭いです。汗腺には、全身にあるエクリン汗腺と腋の下や陰部などの局部にあるアポクリン汗腺があります。エクリン腺からの汗は、大部分が水で、ミネラルが含まれたもの・アポクリン腺からの汗はたんぱく質、脂質、糖質、アンモニア、鉄分などの栄養成分を含むために、皮膚常在菌が増殖しやすく、分解された成分が発酵して腋臭になるのです。
歳を取るにともない体臭は変化します。10~20代は主に汗臭であり、30~50代は汗臭とミドル脂臭、50代で加齢臭が幅を利かすようになります(下図)。汗臭は、“温熱性発汗”“精神性発汗”“味覚性発汗”に分類できます。汗自身には臭いがないのですが、垢や皮脂などと混じりあい、これを皮膚常在菌が分解することで臭い物質が発生し、臭くなります。分泌部から出てきた汗のもとは、皮膚中でミネラル成分などは吸収されますが、再吸収が追いつかないと皮膚表面に出てしまい、余分な成分を多く含むことで臭いが発生するのです。慣用句にある「手に汗握る」「冷や汗をかく」というのは精神性発汗ですね。
ミドル脂臭の発生は、3段階で進みます(下図)。エクリン腺(汗腺)が乳酸を含んだ汗を、皮脂腺が皮脂を分泌。次に頭皮の常在菌(ブドウ球菌)が乳酸と皮脂を分解。最後に臭いを発生させるジアセチルと中鎖脂肪酸が発生し、臭いが混ざりあってミドル脂臭が発生、という流れです。加齢臭は、加齢にともない皮脂腺の中のパルミトオレイン酸が増加し、同時に過酸化脂質も増えはじめます。この過酸化脂質がパルミトオレイン酸と結びつくことで、分解・酸化されてできるのが、加齢臭の元である「ノネナール」という物質です。
“疲労”も臭いのもとです。年代に関係なく、疲労により蓄積されたアンモニアのような疲労物質が溜まると肝臓で処理しきれなくなり、それが汗として排出されると体臭がアンモニア臭くなるのです。体臭には個人差があり、体調によって変化し、病気になっても変化します。余談ですが、がんにも臭いがあり、訓練された犬や線虫はがんの臭いをかぎ分けることが報告されています。ところで、臭いによるストレスのレベルは、その臭いを悪臭と感じるかどうか、ということで変わるのです。思春期でも、ミドルエイジでも、高齢期でも、臭いは成長のあかしであり、無臭がよいというわけではないことを理解していただきたいものです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』
長岡 功 総監修/ 野村 義宏 監修
高齢化や平均寿命が伸びた社会では、「老化」は誰もが避けられない、しかし誰もが可能な限り抗いたいテーマ。その多くは人体の「老化現象」、またそれに伴う「諸症状」として、完全には克服できないまでも、原因やしくみを知ってうまく対応すれば、症状を「やわらげる」ことや、日常生活での「影響を少なくする」こと、また「目立たなくする」ことが可能である。本書では具体的に、老化にともなう病気・諸症状の原因に言及し、その対処・対策法を解説、紹介する。中高年以降の健康と美容の悩みを楽しく読めて、一気に解決する一冊です。
公開日:2023.05.12