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プロ野球選手の進路調査をNPBが発表。短くなる選手生命、求められるセカンドキャリア準備

日本野球機構(NPB)は4月、2020年シーズンで戦力外・引退となった日本人選手133名を対象とした進路調査の結果を発表。過去5年のデータもあわせた、プロ野球選手のセカンドキャリア調査・最新版の内容とは?キャリア支援の専門家・元プロ野球選手に、求められる「セカンドキャリア準備」も聞いた。

133名調査 「野球関係」が76%

日本野球機構(NPB)は4月、2020年シーズンで戦力外・引退となった日本人選手133名を対象とした進路調査結果を発表した。2007年シーズン以降公表されており、今回で14年目。

今回の調査では戦力外・引退選手の進路として野球関係への就職が最多で、全体の76%。NPBをはじめ独立リーグ、社会人野球、解説者・評論家も含まれる。NPB関係だけでも全体の51%を占めた。

野球関係以外の進路は13.5%で、その半数以上は一般企業へ就職。進学、自営・起業、多競技への転向も見られた。未定、不明は残りの10.5%。

「野球関係」進路が増加傾向

「野球関係」の進路が最も多いのは従来通り。2016年から2017年は約70%だったが、ここ3年では約75%以上にのぼり、近年では増加傾向にある。セカンドキャリアの進路として野球関係が一層増えつつあが、一長一短でもある。

アスリートのセカンドキャリア支援を長年行う大浦征也さん(パーソルキャリア執行役員)は、「プロ野球は他競技に比べると事業規模が大きく、職員になる機会も多い。また独立リーグなど、NPB以外の選択肢も増えました。野球選手が引退後、野球関係のキャリアを考えることは当然良いこと」と分析。

一方で、「野球界は幼少期より野球以外の環境に触れる機会が少ない。野球以外に目が向きにくい」とも指摘する。

実際、NPBや選手会をはじめ、省庁や民間企業でも様々なセカンドキャリア支援が増えてきたにも関わらず、近年、戦力外・引退選手の進路に大きな変化はない。

プロ選手としてのキャリアは「短命」に

過去5年のデータをみると、戦力外・引退時の平均年齢は2016年の29.6歳から2020年の28.1歳まで年々低下が見られる。在籍期間も平均8.5年(2016年)から7.7年(2020年)と下降気味。プロ野球選手としてのキャリアは短くなっている傾向が表れた。

そうなると、選手はより早くからセカンドキャリアを視野に入れた準備が必要になる。その際、選手は野球以外の進路があることにも目を向けられるかが問題だ。

これについて先出の大浦さんは、選手とその所属先がそれぞれ取り組む必要があると話す。

「チームやリーグ、指導者は、選手が現役中からキャリアを考える機会を作ること、また選手と外部の接点を作ることが必要です。選手個人はそれらに加え、競技で得られた経験や能力を他領域でも活かせるように、体系化したり言語化することを意識した方がいいでしょう」

多様なキャリア、野球界も恩恵

現役引退後、デロイト トーマツ コンサルティングでコンサルタントとして勤務する久古健太郎氏。2021年4月撮影

実際に、プロ野球から異業界に進んだ選手もいる。久古健太郎さんは、東京ヤクルトスワローズの投手として2018年まで活躍し、契約満了後、2019年にコンサルティング会社のデロイト トーマツ コンサルティングにコンサルタントとして入社した。

久古さんは自身の転職経験も踏まえ、次のキャリアに進む際に必要となる心構えを話してくれた。

「競技をしている時間は人生の一部分でしかなく、長期的な視点を持つことが大事です。競技を通して何を学んでいるのかを自分の言葉で話したり、文字にできるようにしておくといい。その上で、社会に目を向けておくことも重要です。現在は終身雇用がなくなりつつあり、一方で『人生100年時代』が到来しています。どんな社会情勢なのかを知っておくと、社会へ出る際に役立ちます」

一般企業への就職や起業、進学など、野球関係以外のセカンドキャリアはまだまだ少ない。過去5年で20%を上回ったことがなく、5人にひとりもいない。これからより多くの選手が道を切り拓いていくことが期待される。

「進学もとても重要な選択肢の一つだと思っていますので、増えてほしいですね。大学、大学院で経営学や医学を学ぶことは、その後の選択肢の幅が広がり、キャリアを築いていく上で大きな強みになります」(久古さん)

野球関係のキャリアも歓迎すべきことだが、それ以外の道があってもいい。今後、選手のセカンドキャリアが多様化し、様々な人材が輩出されれば、ひいては野球界にも還元されることにもなる。

「現在、プロ野球球団の経営者に元野球選手はいません。ビジネスの経験をした元野球選手がリーグ運営やチーム運営に関わるようになると、より野球界は発展していくでしょう」(大浦さん)

初出=「HALF TIMEマガジン」
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