【心】全身に血を送る、精神、意識をコントロールする
心の働きは、まず、血を全身に運び届けることです。これはポンプ機能で血液を全身に送り出す心臓のような働きです。血を循環させ、栄養物質を体のすみずみにまで届けます。血を生成する働きもしていて、全身の熱を生み出しています。これらの働きに異常が起こると、動悸や息切れなどの症状がみられたり、冷え性になったりします。
心はまた、「神志を主る」とされます。神志とは精神や意識のこと。心はそれらをコントロールして、清明な状態に保つ機能をもっています。人の精神活動は心の働きによるものです。
顔と関係が深く、心が正常であれば顔の血色もよくツヤもありますが、トラブルが起こると、顔の色が赤くなったり、くすんだり、白っぽくなったりと変化します。また、舌も心と関係が深いため、心の異常から味覚がおかしくなったり、ろれつが回らなくなったりすることもあります。
【脾】食べ物の消化吸収を担当する、栄養を全身に送り届ける
脾は、飲食物を吸収し、肺がとり入れた自然界の気とあわせ、気・水を生成し、全身へ栄養を送り届ける「運化」といわれる消化活動をしています。脾から届けられた気・水をもとに心が血を生成するなど、ほかの臓器は脾がつくり出した栄養によって機能しています。
脾が弱るとあらわれるのは、食欲不振や下痢、むくみなどの症状ですが、全身の栄養を生み出す脾の機能が低下すると、気・血・水の不足から、やがてほかの臓器の働きも悪くなっていき、疲れがとれない、気力が出ないなどさまざまな症状を引き起こします。
血が脈管からもれ出ないようにコントロールする「統血」という働きもあり、この機能が失調すると、炎症がないのに、鼻出血や皮下出血、不正性器出血が起こったりします。
脾の異常があらわれやすいのは、口や唇です。脾の状態がよいときには、おいしく食事ができますが、悪くなると体の力が入りにくくなったり、唇のツヤや色も悪くなったりします。
【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎
【書誌情報】
『生薬と漢方薬の辞典』
著:田中耕一郎/ 監修:奈良和彦・千葉浩輝
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公開日:2024.12.05