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TUBC(東京ユナイテッドバスケットボールクラブ)を裏で支える若干20歳のマネージャー、長尾花音さん! その多岐に渡る仕事とは? プロスポーツ界のマネージャーに直撃インタビュー【バスケ/Bリーグ】

B3チームを支える「マネージャーの仕事」

マネージャーになったきっかけとは?

B3参戦3シーズン目を迎えた東京ユナイテッドバスケットボールクラブ(以下TUBC)が、開幕から好調を維持している。第6節を終えた時点で6勝2敗と岩手ビッグブルズ、横浜エクセレンス、香川ファイブアローズに次いでリーグ4位。過去2シーズン、プレーオフに進みながら昇格を逃した悔しさをバネに、さらなる飛躍を予感させるに十分な戦いぶりだ。

開幕3戦目の岩手戦では本拠地・有明アリーナに今シーズンのB3最多観客となる9385人を動員するなど、実力も人気もB3トップレベル――。そんなチームを裏方として支えているのが、マネージャーの長尾花音さんだ。

長尾花音

現在20歳の長尾さんは、昨シーズンまでインターンとしてチームに帯同。今シーズンからマネージャーとしてチームに正式採用され、専門学生との「2足のわらじ」をこなしている。

バスケットボール経験は小学生時代の約2年間程度。決して、「バスケ一筋」の人生を送ってきたわけではない。ただ、Bリーグを含めてバスケを「見る」機会は同世代と比べても多かった。

マネージャーになったキッカケは通学する東京スポーツ・レクリエーション専門学校でTUBCのインターン募集の求人を見つけたことだ。もともとスポーツ関連の仕事を志望していた長尾さんは、この求人に応募し、見事採用される。ただ、当初はチーム内でも「数多くいるインターン生のひとり」という存在だった。

1シーズンを経て、今シーズンから正式にマネージャーとして採用された理由をチーム最年長の宮田諭選手はこう語る。

長尾花音

「いろいろと話をする中で、彼女は明確に『マネージャーを仕事にしたい』という意思を持っていました。ちょうどチームとしてもマネージャーを採用しようか……と考えていたところだったので、声をかけさせてもらいました」

プロバスケットボールリーグとはいえ、3部に該当するB3クラブは資金が潤沢なわけでもなく、スタッフがさまざまな役割を「掛け持ち」するケースも珍しくない。TUBCでもマネージャー専任の人材はおらず、過去には通訳やトレーナーなどが兼務する形をとっていた。

長尾花音

練習サポートから航空券の手配、タイムスケジュール管理まで……

一言で「マネージャー」と言っても、その業務は多岐にわたる。朝起きたら、まずはメールチェックが日課だ。そこで他チームからの連絡事項などをチェックし、必要であれば返信する。たとえばプレシーズンマッチで対戦するチームのマネージャーや興行担当者と現地での練習時間、試合時間、スタッフミーティング、審判ミーティングなど、すべてのタイムスケジュールを確認し、コントロールしなければならない。当然、外部との調整が済んだら、それを自チームに伝達するのもマネージャーの仕事だ。

チーム練習にも帯同し、選手のサポートやドリンク、プロテインの補給、補食の準備などの、いわゆる「マネージャー的な仕事」もこなしていく。遠征時には対戦相手との調整だけでなく、移動や宿泊の手配をするのもマネージャーの仕事のひとつ。

一般的に「マネージャー」というと、練習時の雑務をイメージする読者も多いだろうが、そういった仕事はもちろん、それ以外の仕事の量がとにかく膨大だ。

長尾さんはそういった調整をすべて一人でこなしながら、ミスや伝達漏れがないようにすべてテキスト化してチームに共有している。

「練習時間のサポートだけでなく、それ以外の時間は調整業務だったり、不足した備品の買い出しなども行います。大変は大変ですけど、今は『楽しい』と思いながら仕事ができています」

長尾さんは、笑顔でそう語る。そして、そんな仕事ぶりは、チーム内でも高く評価されている。

長尾花音

「24時間、常にチームのためにいろいろな業務をこなさなければいけない。想像できるあらゆる仕事がマネージャーの業務で、本当に大変だと思います。でも、彼女はそれを丁寧にこなしてくれる。チームにとって、不可欠な存在です」

チームのレジェンド・宮田選手をして「チームに不可欠」と語らせるだけの見事な働きぶりだ。

長尾花音

もちろん、マネージャー業務1シーズン目は「楽しい」ことばかりではない。

「こなさなければいけないタスクが一気に押し寄せることがあって、そんなときはテンパりそうになります(笑)。たとえば、忙しくなるとどうしても忘れ物をしちゃうことがあって……。特に作戦盤は忘れがちです」

専任マネージャーとなって1年目、しかも膨大な業務をこなさなければいけないとなれば、多少の「忘れ物」も仕方がないかもしれない。ただ、そこで「ただでは転ばない」のが長尾さん。

「忘れがちなので、じゃあ『作戦盤、もう一個買ってください』ってチームにお願いしました。TUBCは有明アリーナという大きな会場を本拠地としているので、つねに同じ場所で練習できるワケではないんです。そうなると、必要な備品も毎回車で運ばなければいけないんですけど、最初から2個用意しておけば、忘れることもないかなって」

こういった「機転」は宮田選手も高く評価する部分だ。

「普通、なにかミスが起きたら、『次は同じ間違いをしないようにしよう』と考えるのですが、彼女の場合はそこからさらに先の『こうすればミスがなくなるんじゃないか』という提案をしてくれるんです。作戦盤を忘れることがあるなら、最初から複数用意して、移動先にも準備しておけばいい。僕らが当たり前だと思っていたことに疑問を持って、新しい提案もしてくれるのですごく助かっています」

採用前から「マネージャーを仕事にしたい」という強い意志を持っていた長尾さんだが、将来の目標も明確だ。

「マネージャーの仕事は続けたいと思っています。TUBCは今B3ですけど、ゆくゆくはもっと上のカテゴリでもやってみたい。地元が千葉なので、まずは経験を積みながら将来的には千葉のチームでもマネージャーとして働くのが目標です」

もちろん、TUBCとしても彼女の目標を承知の上で、全面的にサポートしていくという。「上のカテゴリ」を経験させるためには、まずは自チームでのB2昇格が最短の道でもある。もちろん、「千葉のチーム」ではなく、TUBCが将来的にB1やBプレミアに参戦し、そこでマネージャーとして働くという道もあるだろう。

創設3シーズン目で悲願のB2昇格を目指すTUBC。選手だけでなく、長尾さんのような存在がチームを支え、プレーオフ、さらにその先の戦いを目指している――。

長尾花音

写真・TUBC提供
文・花田 雪

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