ふれあいにもルールがある
どんなに仲のよい家族でも友達でも、「今はハグされたくないな」「今日は手をつなぎたくないな」というときがあるかもしれません。
誰にでもここから先は退づいてきてほしくないという境界織(バウンダリー)があり、それは時や場合によって、また年齢によっても変化していきます。
小さいころは、家族や保育園の先生に抱っこしてもらったり、ひざの上に座ったり、手をつないでいたり、ぎゅっと抱きしめてもらったりしていたかと思います。今ではもうそれは恥ずかしいからしたくない、と感じる人もいるかもしれませんし、ふれあうと安心できるからふれあいたいと感じる人もいるかもしれません。
たしかに人にふれる、またはふれてもらうことは心地よく安心できることだと感じている人は多いかもしれません。ただし、これは「信頼できる相手」であり、「心から安心できる場所」であることが大切。
苦手な相手だったり、落ち着かない場所だったりすると、人とふれあうことは不安や不快に思うことがあります。「ふれあう」という行為には、目と目が合う、手をつなぐ、並んで歩く、近い距離で見つめ合うなどがあります。
このほかに、特別な相手との性的なふれあいがあります。キスをする、腰に手をまわして抱きよせる、セックスをする……これらに関しては一方的にふれてしまうと、困りごとが起こることがあります。
性的なふれあいについては、男の子と女の子で思いに差が生じる場合もあります。
一概にはいえませんが、男の子の場合、好きになる、抱きしめたくなる、セックスをしたい!と一気に盛り上がり、つきすすみがちです。これは、男の子のほうが、性ホルモンの分泌が多いので、性的欲求が高まりやすく、気持ちにズレが生じてしまうからです。
その反面女の子は、好きになる、話してみたくなる、手をつないだり、抱き合うなどふれあいたくなる、セックス、キスをするなど愛されたくなると少しずつ気持ちが盛り上がっていく傾向があります。性差もありますが、もちろん個人差もあります。
男の子が一方的に自分の思いだけでつきすすんでしまい、たとえば、付き合っている相手とセックスをしてしまったとします。相手の女の子は、本当はまだイヤだったけど、好きな相手なのでガマンして応じたということが、起こってしまうかもしれません。
ふれあうときには、同性でも異性でも、ちゃんと言葉にして相手に聞き、お互いに同じ気持ちであることを確かめてからにします。これを「同意」といいます。
男の子と女の子のお付き合いの段階
「ふれたい」「抱きしめたい」と自分だけが思って、それを「相手も同じ気持ちに違いない!」「とくに、イヤだといわないから、同じ気持ちなんだろう」「イヤっていっているけど、笑ってるし本当はOKってことなんだな」と勘違いをして、一方的にふれてしまうと、相手にとっては心地がよくない、イヤだと思うことがあるかもしれません。
たとえば、手をつなぎたいと思ったときに、何もいわずに手をつないでしまうのは、同意がとれていないということ。手をつなぐ前に相手に「手をつなぎたいんだけど、つないでもいい?」と聞いて、相手が「いいよ」といったら、ちゃんと同意がとれたということになります。
きちんと言葉にしてお互いに話して、同じ気持ちであることを確認してから、ふれあうようにしましょう。これは、家族の間でも、友達の間でも同じです。
よくあるのが、くすぐりあうこと。相手がくすぐられて笑っていたとしても、それは楽しくて笑っているのか、本当はイヤなのにくすぐったいから笑ってしまっているのか、わかりません。そんなときも「くすぐってもいい?」と聞けるといいですね。
ふれあうのは、絶対ダメということではありません。ふれあいのなかで、とくに抱き合う(ハグ)には、信頼していたり、大切に思っている相手とだと、ストレスをやわらげたり、お互いの愛情を感じたり、幸せな気持ちになれたりという効果があったりもします。心地よいふれあいをするためには、ルールを守りましょう。
ONE POINT
【出典】『12歳までに知っておきたい男の子のためのおうちでできる性教育』著: 高橋幸子
【書籍情報】
『12歳までに知っておきたい男の子のためのおうちでできる性教育』
著:高橋幸子
男の子の「気になっているけれど、面と向かっては聞きづらいこと」パパママの「どうやって伝えたらいいかわからないこと」にこたえます!これから思春期を迎える男の子、思春期の入り口に立った男の子が知っておきたい「性の知識」をわかりやすく紹介。マンガ・イラスト図解・全編フリガナつきの読み物で、子どもひとりでも、家族でも読める1冊です。学校では教えてくれない、パパやママも伝え方がわからない、
・これから起こる体の変化と対応法
・家族や友達との距離感が変化し、心にも変化が訪れたときの対応法
・SNSや友達同士の噂に惑わされないための正しい「性の知識」の身につけ方
・体と心の変化に困ったとき、悩んだときの相談先の見つけ方
などを解説。
性教育は子どもを守るだけでなく、子どもの自己肯定感をも高めることができます。誰しも体や心に「境界線」をもっていることを学ぶので、自分も人も大切にできる・人と心地よい関係を築けるようになります。著者は、産婦人科医のサッコ先生こと高橋幸子先生。全国の小学校・中学校で性教育の講演を行ない、子どもたちの多くの質問に答え続けている高橋先生の、科学的にわかりやすく伝えるコツも満載です。
公開日:2024.08.26