仏の世界は分業制だから
仏教は物欲などの煩悩を絶つことが必要だと説いています。また、むさぼりの心や愚かさとともに怒りの心を取り去ることも必要だとしています。それなのに仏像には華美なアクセサリーをつけているものや、恐ろしい怒りの表情をしているものがあります。これは教えと反しているのではないでしょうか。実はそれらの仏像は、必要があってそのようなアクセサリーをつけたり怒りを現したりしているのです。言うなれば仏の世界は分業制で、彼らはおしゃれ役と叱り役なのです。仏像は如来(仏)・菩薩・明王・天の4種類に大きく分けることができますが、このうち煩悩を断ちきって悟りの境地に至るという仏教の理想を体現しているのが如来です。
そのため如来は飾り気のない衲衣という衣を着て、アクセサリー類は一切身につけていません。表情も穏やかで、拝する者の心も静めてくれるようです。しかし、人によっては如来は近づきがたい感じがして親しみをもてないこともあるでしょう。欲の赴くままに生きているような人や罪の意識が薄れてしまったような人は、如来の教えを聴こうとはしないでしょう。
菩薩はあえて煩悩の世界に身を置いて人々を救う「仏」で、相手に合わせてさまざまな姿をみせるとされます。時には華麗な姿〈*〉で惹きつけることもあるのです。また、悪事に染まって生きる者には、時には力でねじ伏せたり、恐ろしい姿で畏怖させたりすることも必要でしょう。明王はそんな者たちのために如来が現した忿怒の姿なのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 仏教』 監修:渋谷申博
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 仏教』
監修:渋谷申博
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公開日:2021.08.26