「粒」を使って多様な可能性を一度に試せる量子コンピュータ!
量子コンピュータは従来のビットではなく、重ね合わせを使った量子ビットを使って計算します。量子コンピュータはふつうのコンピュータとは計算の方法が根本的に違います。量子コンピュータには「たくさんの可能性の中から1つの正解を出すのが得意」という性質があります。量子コンピュータも「粒」と「波」の2つの性質を使うのですが、この項と次項で2つの例を上げて量子コンピュータの計算原理を考えてみましょう。
1つ目は、「粒」を使った「フルーツNo1選手権」。イチゴ、ミカン、バナナなど20個のフルーツから「いちばんおいしいフルーツ」を選ぶチャレンジです。
このとき従来のコンピュータは、1個ずつ全部食べるという方法で計算します。順番にフルーツを食べていき、最後に全部の味を比較して決めるので時間がかかる。このようなふつうのコンピュータの計算方法は「逐次実行」と呼ばれ、結局20個全部食べる計算方法となるわけです。
ですが、量子ビットを用いた量子コンピュータはいろいろな「重ね合わせ」が使えます。3の項では、ジャンケンの量子の手はグー、チョキ、パーの3つの重ね合わせでしたが、それをいくつにも拡張できます。 この長所を使って、まず「スーパー量子フルーツ」を用意します。このフルーツは20個のフルーツの重ね合わせですから、それらの性質が重ね合わさった1個のスーパー量子フルーツとなります。そこで、全部の重ね合わせフルーツに「どのフルーツがおいしいか?」と問いながらひとかじりすることで、簡単にいちばんおいしいフルーツを当てることができるのです。
こうした特性を持つ量子コンピュータは、重ね合わせを利用して「たくさんの可能性を一度に試す」ことができる。それが最大の武器なのです。
「粒」を使ったフルーツNo1選手権!
この中からいちばんおいしいフルーツを選んでください
◉ふつうのコンピュータの場合
ふつうのパソコンは1個1個全部食べる
ふつうのコンピュータが答えを出すのは、たとえていえば図のようにさまざまなフルーツを1個ずつ食べてその美味しさ(答え)を決定する。これを「逐次実行」というが、順番にすべてを食べてから決定するので時間がかかる。
◉量子コンピュータの場合
大きな重ね合わせを使ってたくさんの可能性から1つの答えを探すのが得意!
量子ビットを使う量子コンピュータはたくさんの「重ね合わせ」が使える。そこで図のように20個(粒)の「重ね合わせスーパー量子フルーツ」をつくってひとかじりすれば、いとも簡単にいちばんおいしいフルーツが当てられる。つまり、量子コンピュータは量子の重ね合わせを利用して、多岐にわたる可能性をたった1回で試すことができるため、答えを出すスピードが格段に速いのだ。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話』著:久富隆佑、やまざき れきしゅう
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話』
著:久富隆佑、やまざき れきしゅう
その登場以来、物理学の常識を打ち破り、宇宙・自然観から人々の生活まで一変させた革命的理論といわれる「量子(論)」。近年のノーベル物理学・科学賞の受賞者のほとんどが量子論と関わった研究者といわれ、特に注目を集めている。
生命・時間・物質まで、この世界の根本、宇宙全体にわたる究極しくみ、生活に密接に関わり、すべての常識やナゾを解くカギと言われる「量子」だが、とにかく難解である。この量子を一から読み解く一冊。
量子とはそもそも何か?
このミクロの世界の量子が、なぜ重要なのか?
量子によって何がわかり、何ができるのか?
丁寧にとことんわかりやくイラスト図解で「不思議で面白い量子の世界」を読み解く超入門書!
公開日:2025.01.13
