19世紀、ヤングが発見した「光波の干渉」とは何か?
量子力学発見の約100年前の1800年ごろ、イギリスの物理学者トーマス・ヤングが行った実験を見てみましょう。まだ波でもあり粒でもある「量子」という存在が発見される前の話です。
この実験が行われるまで、光は波なのか、それとも粒の集まりなのかという論争が長く続いていましたが、決定的な証拠はありませんでした。ヤングは想像力を振りしぼって、「見分けられるはずだ!」と、ある実験を思いついたのです。
まず光を出す光源の前に長方形の細いスリットと呼ばれる切れ目が1個ついた板を置きます。この切れ目から出る光がスタート。つぎの板にはスリットが2個並んでいます。光源から出た光がこれらのスリットを通って奥のスクリーンに届くとき、「スクリーンにはどのような光の模様が描かれるか?」。これがヤングの思いついた実験設定です。
たとえば水の波がこの装置を通るとき、波は初めの1個だけのスリットを通ると、そこから扇形に広がっていき、つぎに2個並んでいるスリットを通ると、そこから2個の扇形の波が広がります。2つの波が重なったあとのスクリーンでは、波の大きいところと小さいところが交互に縞(しま)模様として出てきます。
つぎは同様に粒をこの装置に通してみましょう。粒は2枚目のスクリーンにある2つのスリットのどちらかを通り、そのままの方向に飛んでいくため、スクリーンには粒でできた2本の線が描かれます。
それでは実際に光を用いて行った実験の結果を見てみましょう。なんとスクリーンには波でしか起こらない何本もの縞模様が現れたのです。つまり、この実験によって、光は「粒」ではなく「波」であると結論付けられました。
量子ではさまざまな「波」が登場しますが、それが本当に波なのかというのを説明したり証明するのは、実はとてもむずかしいのです。ヤングの実験の素晴らしいところは、「3本以上の縞模様が見える=波」というひと目でわかる簡単な見分け方を開発したところです。
いまでも量子物理学者は、何か新しいものが波の性質を持つかを調べるときには、すぐにヤングの実験を行います。ヤングの技術は古くても新しい「フォーエバー・ヤング」なわけです。
ヤングの実験:水の波
水の波をスリットに通す。
波が重なりあったあとでは、波が大きくなるところ、小さくなるところというように縞々がいっぱい見える。これは波の干渉と呼ばれる。
ヤングの実験:粒
2つのスリットの付いた板にボール(粒)を投げるとスリットの数と同じ2本の縞が見える。
では、光を通してみよう!
ライトを照らすと縞模様がたくさん出たことで「光は波」と判明。
トーマス・ヤング(1773〜1829年)
イギリス生まれ。おもしろい実験を思いついた物理学者。長方形の板に切れ目を入れてそこに光を通すという試みだ。ヤングはこの実験により、「光は波」と証明した。でも、のちに「光は粒」でもあることも判明するんだね。そのほかにも「弾性体力学」における基本定数「ヤング率」(ひずみと応力の比例定数)でも有名だよ。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話』著:久富隆佑、やまざき れきしゅう
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話』
著:久富隆佑、やまざき れきしゅう
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公開日:2025.01.28