ゲノム編集と遺伝子組み換えはどう違う?
自身の遺伝子か他の遺伝子か
食品の品種改良についてよく聞かれるのが、ゲノム編集と遺伝子組み換えの違いです。これまでみてきたように、ゲノム編集の特徴は、もともともっている遺伝子を切断したり、切断した部分に自分がもっている別のものを組み込むなどして、もとの性質を変えることです。一方で、遺伝子組み換えは、別の生物がもつ遺伝子を、 性質を変えたい生物に組み込むもので、 まったく新しい生物が誕生することになります。
たとえばトマトの品種改良の場合、ゲノム編集では、もとのトマトの遺伝子を操作するだけなので、別の生物にはなりません。ところが、遺伝子組み換えでは、リンゴやヒラメなど別の生物の遺伝子を入れることも可能で、もとのトマトとは、まったく別物ができることになります。
遺伝子組み換えの技術は1970年代に登場してから、あっという間に世界中に広がりました。それまで同じ種どうしの遺伝子しか使えなかったのが、別の種の遺伝子も利用できるようになったことで、さまざまな試みが可能になったからです。ただ、入れたい遺伝子をどこに組み込むのか指示できないので、必ずしも成功するとはかぎらないのが難点です。その点、ゲノム編集は成功率が高く、改良の期間も3週間程度。2019年には厚生労働省が、届け出制でゲノム編集食品の流通を認めています。
世界初の青いバラは遺伝子組み換え
青い花の色素をつくる遺伝子を見つけ、それをバラの細胞に組み込んだ。十数年の試行錯誤が実を結び、2004 年に成功。
編集と組み換えではまったく違うトマトができる
ゲノム編集トマトは、自分の遺伝子を切って改良したもの。遺伝子組み換えトマトは、別の生物の遺伝子を組み込んだもの。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』著:高橋祥子
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』
著:高橋祥子
『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』は、生命科学の基本概念を分かりやすく解説した書籍です。生命科学は、生物の構造や機能、進化などを研究する学問ですが、専門的な知識が必要で、難しく感じることも多い分野です。しかし、この本では、豊富な図解やイラストを使い、専門用語や複雑な内容をわかりやすく噛み砕いて説明しています。
特に、DNA、遺伝子、進化、免疫など、私たちの体や生命現象に関わる重要なトピックを、科学的な視点から解説しつつ、日常生活に関連づけて説明しています。初心者でも理解できるように配慮されており、難解なテーマでも「なるほど」と納得できる構成になっています。この本は、生命科学に興味があるけれども専門的な知識がない方、または生物学を学んでいる学生など、幅広い読者におすすめです。
公開日:2024.10.12