トップとリーダーの間に隙があってはならない
将軍は国家の補佐役であり、軍の指揮官である。指揮官と君主(国のトップ)が親密であれば国は安泰であるが、両者のあいだに隙間が生じれば、その国は必ず弱体化する。
たとえば、指揮官の出征中にその弊害が顕著になることがある。ここぞとばかり君主に取り入ろうとする者もいれば、敵国に内通して君主と指揮官間の亀裂を広げようと画策する者もいるのである。
本来であれば、前線の実情を知らない君主は細かな指図をすべきではない。それなのに不確かな情報に基づき、進撃してはならない状況で進撃命令を、撤退してはならない状況で撤退命令を伝達することがある。
ほかの作戦行動についても同じで、後方にいる君主が命令を下せば、前線にいる兵士たちは指揮官の命令と君主の命令のどちらに従えばよいか戸惑い、軍としての体ていを守れなくなる。
指揮系統が乱れては敗北が避けられず、窮状を見た他国が敵方について参戦する恐れはもちろん、亡国の危険さえをも生じる。
ゆえに君主は、ひとたび指揮官を任命したなら全権をその指揮官に託し、現場の指揮に一切干渉してはならない。
そして、指揮官の側でも君主からどのような命令が下されようと絶対服従ではなく、目前の状況に対処することを最優先させるべきである。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』
著者:島崎晋
新紀元前500年頃、孫武が勝負は運ではなく人為によるとし、その勝利の法則を理論化した兵法書。情報分析や見極め、行動の時機やリーダー論等、現代に通じるものとして今も人気が高い。「名言」を図解でわかりやすく紹介する。
公開日:2021.08.14