金メダルに大きく貢献した後藤希友
無神経にも程がある。
名古屋市の河村たかし市長がマスクを外して金メダルをガブリとやったシーンが物議をかもしている。
東京五輪のソフトボールで金メダルを獲得した名古屋市出身の後藤希友が8月4日、市役所を訪れ、金メダル獲得の報告を行なった。
後藤と言えば、08年北京大会以来、13年ぶりの連覇に貢献した大功労者である。
この20歳のサウスポー、今大会は全6試合中5試合に登板し、10回3分の2を投げ、防御率0.00。奪った三振は実に22。決勝の米国戦では6回無死一塁の場面でリリーフに立ち無失点に抑えた。
河村市長、後藤からメダルを首にかけてもらうところまではよかった。しかし、ここでハメを外してしまった。
<手に取り「重たいな」とつぶやくと、マスクを外してメダルをかんだ。後藤の了解を得ず、突然のパフォーマンスだった。後藤は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔で応じた>(スポニチ8月5日付)
新型コロナウイルスの感染が拡大し、握手さえはばかられる空気の中、メダルをガブリはないだろう。
突然のこの行為に対してはアスリートやOBからも批判が相次いだ。
「選手に対するリスペクトが欠けている上に、感染対策の観点からもセレモニーさえも自分自身やチームメートでメダルを掛けたりしたのに、“かむ”とは。ごめんなさい、僕には理解できません」(日本フェンシング協会前会長の太田雄貴氏)
後藤が所属するトヨタ自動車も黙ってはいられなかったようだ。
「今回の不適切かつあるまじき行為は、アスリートへの敬意や称賛、(新型コロナウイルス)感染予防への配慮が感じられず、大変残念に思う。河村市長には責任あるリーダーとしての行動を切に願う」
それにしても、メダルを噛むという行為は、いったい、いつ、誰が始めたものなのか。
インターネットには1988年ソウル五輪の競泳男子200メートル自由形で優勝したオーストラリアのダンカン・アームストロングが最初ではないか、という情報が出ていた。
日本でもメダルを噛む選手は何人かいたが、そのほとんどはカメラマンの要請に応じたもの。おそらく河村市長の頭の中には、そうしたシーンが残っており、悪ノリしてしまったのだろう。
メダルは噛むものではなく、胸に飾るもの。これを機に悪習を一掃してもらいたい。
初出=週刊漫画ゴラク2021年8月20日発売号