伽藍の配置は仏塔の位置で見分ける
五重塔などの仏塔、金堂、講堂、門など、寺院を構成している施設を伽藍といいます。いわゆるお堂です。
仏塔はお釈迦さまの遺骨(仏舎利)を納めた施設です。金堂には如来や菩薩などの仏像(本尊)が安置されています。講堂は説教や講義、集会を行う場所。これらの施設を囲むのが回廊で、その一部に中門が付けられます。回廊内は神聖な空間なので、一般の人々は入れませんでした。仏教伝来後しばらくのあいだ、中門は参拝者の入口ではなく、法要などを行う儀礼の場だったのです。
伽藍の配置は、時代によって変化しました。ポイントは仏塔の位置です。かつて信仰の中心は、仏舎利をおさめる仏塔にありました。
しかし年月が経つとともに、人々は仏像の方に心を動かされるようになっていきます。この変化が、伽藍の配置にも影響を与えたのです。
日本最古の本格的な伽藍を持つ飛鳥寺の伽藍を飛鳥寺式伽藍と呼びます。仏塔を三方から金堂が取り囲む配置であり、仏塔重視は明らかです。時代が下り、四天王寺式伽藍になると、仏塔、金堂、講堂が一列に並びますが、正面はまだ仏塔でした。
ところが、法隆寺式伽藍では仏塔と金堂が横に並び、対等になります。そして薬師寺式伽藍に至ると、ついに金堂が中心になるのです。
興福寺式伽藍では、仏塔は回廊の外に配置されます。これは、人々が回廊内に入れるようになった時期と重なっています。そのあと東大寺式伽藍では仏塔はさらに遠く離れ、寺院のサインのような存在になっていきました。伽藍を知ると、飛鳥、奈良時代の人々の心の変遷を読み取ることもできるのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』著/スタジオワーク
【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
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公開日:2021.11.30