スイングの体の動きが身につく「カゴ練」のすすめ
ゴルフクラブを振ろうとすると、テークバックでいきなりフェースを開いたり、極端にシャットに上げたり、という動きになりがちです。これは、ゴルフクラブが比較的小さくそして軽いということに起因すると思われます。その証拠に、練習場にあるボールを入れるカゴを持って振ってもらうと、自然にそれなりのスイング動作になるという事実があります。
私のジュニアスクールでは15年前からカゴを振る「カゴ練」を採り入れています。子供たちに「カゴを上げてください」と言うと、横に回すような動きはまずしません。言われなくても、飛球線に沿ってまっすぐカゴを上げようとします。このとき大事なのは「体を縦に使う」ということで、具体的には胸郭(きょうかく)から動かして体をねじり上げるような動きです。この動きを覚えてもらいたいがゆえに、カゴ練をやってもらっているといっても過言ではありません。
実際の指導現場ではお互いに向かい合う、もしくは壁に向かった状態でカゴ練をやってもらい、カゴを下ろすときに右肩が突っ込んで打ちに行くような動きをしてしまうと相手や壁に当たってしまうので、子供たちは当たらないように下ろそうとします。このときの動きは、体を開かず手元を低い位置に持ってきますので、プロのようなスイング動作が自然に身につくわけです。
この練習の狙いは、体の開きを抑えて手元が低い位置を保ち長いインパクトゾーンを作ることです。そのためには、大きな物を持ってスイング動作を行うことが近道だと私は考えます。
ほとんどのアマチュアはスピンアウトといって、体を横に回そうとして右サイドが突っ込みます。これをカゴ練で行うと相手や壁に当たってしまう動きです。当然当たらないようにしますから、覚えてもらいたい動きになるのです。カゴを左に回しながら持ち上げ、その向きのまま低い位置に下ろしてきます。
カゴを下ろしてからどうなるかというと、カゴを右に回したままでは不自然ですから、カゴを回しながら自分の正面のスペースを通そうとします。これはフェースターンに他ならず、つまりクラブを持つ前に大事な動きを覚えることができるということです。いきなりゴルフクラブを振ると、バックスイングで右ヒジが体の後ろに外れてしまう人や、体の上に外れてしまう人がたくさんいますが、カゴのような大きな物を持つと、それらの動きがおかしいことに気づくのです。
「トップまで上がったらまず腰を切りましょう」というようなレッスンが昔からありますが、これはカゴを持っていたらあり得ない動きです。「肩を水平にターン」というのも同じで、これらの動きを先に身につけてしまうと上達が物すごく遅れてしまいます。何もわからないうちにクラブを持って小さなボールを打とうとすると、どうしてもそうしたくなるのですが、だからこそ私は、最初に「当てるものじゃない」ということを教えたいのです。それには大きな物をしっかり振ることが最適で、それが形になったのが「カゴ練」ということです。
【書誌情報】
『ゴルフは直線運動(スイング)で上手くなる!』
著者:三觜喜一
本書の著者は、ゴルフスイングについて「簡単に言ってしまうと直線運動ということ。回転する部分もあるが、直線イメージでとらえることで、スイングはシンプルになる」と言う。そこで、この本では、「スイング=直線運動」に基づいた体の動かし方を学ぶドリルをはじめ、アドレス、グリップ、そしてスイングの具体的な直線動作をわかりやすく解説。また、著者の指導現場で連携しているトレーナーとスイングと体の動きについて対談。スライス、ダフリといったミスショットの具体的な修正法も収録した。
公開日:2020.01.05
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