最新技術が明らかにする生命の全貌
古生物の研究者は、ハンマーで岩を叩いたり、化石をスケッチしたり、顕微鏡をのぞいている人というイメージがあるかもしれません。
もちろん発掘や標本の記録はいまも欠かせない手法ですが、古生物学にも新しいテクニックが次々導入されています。
近年の大きな進歩は、やはり「透視」が可能になったことでしょう。
CTやシンクロトロン(円形加速器)などで放射線をあて、貴重な化石を壊すことなく、内部を観察できるようになりました。
100年以上謎に包まれていたヘリコプリオンの歯とアゴの形状が明らかになったのもこの成果のひとつです。また、骨以外の内臓部分を観察できたという報告もあり、今後さらなる大発見が期待されています。
もうひとつの大きな進歩は分析技術です。 地層に生物の痕跡である炭化水素やアミノ酸、DNAなどの有機物が含まれていることがあり、これを化学化石(または分子化石)と呼びます。
そのなかで、とくにある生物のグループに特徴的な有機物をバイオマーカーといい、殻や歯などの硬組織をもたない生物の存在をも知ることができるようになっています。
最近では、エディアカラ紀のディッキンソニアが動物であったことがバイオマーカー分析で明らかになりました。
化石標本の3Dデータ化が進んだことで、恐竜などでは、CG上で骨格を復元し、筋肉を考慮したモデルから身体の動きなどを推定した研究や、脳や三半規管(さんはんきかん)を復元するなど、より「生き物」として捉える研究が進められています。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 古生物の話』
著者:大橋智之 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
大橋智之(おおはし・ともゆき) 北九州市立自然史・歴史博物館 学芸員。古脊椎動物担当。1976年、福島県生まれ。東北大学理学部卒。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。日本古生物学会会員。
「古生物って、いったいなに?」「どうして絶滅した生物の生態や色がわかる?」素朴な疑問形式で、太古に生きた古生物のキホンとディープな魅力を紹介。触手が特徴のアノマロカリス、丸ノコギリのような歯をもつヘリコプリオン、進化の懸け橋のティクターリク、超巨大トンボのメガネウラ、中生代最後の暴君竜、ティラノサウルス……。古生代、中生代、新生代のスゴくて面白い絶滅古生物約50種を、リアルなイラストとともに解説しました。最新の研究成果でそのユニークな特徴を余すところなく伝えます。奇妙でかわいい、スゴくて個性的!太古の生物の魅力が存分にわかります。いま最もホットな話が満載。古生物の魅力と謎が図解イラストで楽しくわかるエンターテインメント教養本です。
公開日:2022.11.14