生活習慣病や糖尿病の予防、脳の強化も
階段歩行研究の実験で、階段を下りる運動をした人たちの骨密度や血中脂質、インスリン感受性などが改善されたことはすでに紹介しました。骨密度が高くなれば、骨粗鬆症や転倒でのケガの予防にもなります。血中脂質が改善されれば生活習慣病の予防に、インスリン感受性が高まれば糖尿病のリスクも減ります。こうした健康効果はほかにも見られます。
トレーニングで筋肉量が増えれば、基礎代謝量が多くなり、体脂肪や体重の減少につながります。基礎代謝とは、何もしていないとき(安静時)に消費されるエネルギーのことです。私たちが消費する全エネルギーの約7割をこの基礎代謝が占め、そのうちの2割以上が筋肉によって消費されます。
さらに、以下のような効果も期待できます。
・筋力、体力がアップすることで疲れにくくなる
・運動が脳への刺激になり、脳の強化につながる
・身体のバランス能力が上がる
・老化で衰えやすい「速筋」を鍛えることができる
最後に挙げた「速筋」について少し補足します。筋肉には瞬発力にすぐれた速筋(白筋)と、持久力にすぐれた遅筋(赤筋)があります。前者はダッシュやハイジャンプなど、後者はマラソンや登山などでおもに使われます。速筋は加齢とともに衰えやすい筋肉ですが、エキセントリック運動はこれを刺激して筋肉の若さを保ってくれます。こうした健康効果は、高齢者の健康リスクを下げ、(生活の質)を維持、向上させることが期待できます。
【書誌情報】
『ゆ〜っくり座れば、一生歩ける!』
著:野坂和則
一生歩ける足腰はゆ〜っくり座ることで鍛えられる!「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」である健康寿命は、男性は約72歳、女性は約74歳です。誰でも歳をとるにしたがって身体機能は衰えていきますが、その衰え方には大きな個人差が。その個人差の要素のひとつが「運動」です 。運動をしている人とそうでない人では、健康寿命に大きな差が出てきます。運動といってもいろいろありますが、健康寿命を高めるには脚の筋力を維持し、向上させる筋力トレーニングが必須です。しかし、そうは言っても普通の筋トレはつらそうだし、なかなか重い腰が上がらない……という方にこそ実践して頂きたいのが本書で紹介している「エキセントリック運動」です。ゆ~っくりイスに座る時、大腿の前側の筋肉は伸ばされていきます。これが典型的なエキセントリック運動です。本書では、自宅でできるエキセントリック運動を紹介しており、どうしてエキセントリック運動が一生歩けるような足腰をつくるのに適しているのか解説しています。試しに、ゆ~っくりイスに座ってみて下さい。それだけでもかなり脚に効いていることがわかるはず。つらくないのに効果は絶大――。エキセントリック運動をすれば、10年分の筋力低下を、たった2ヵ月で元に戻すことも可能です。転ばぬ先の杖、一生歩ける体でいられるように、今日から準備を始めましょう。高齢者の方はもちろん、家族全員でぜひ読んで頂きたい一冊です。
公開日:2020.02.13
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