~酸素の発生と生物の進化~
地球上に生命が誕生したのは、およそ40億年前。最初の生物は、海水に豊富に含まれた有機物を栄養分としていました。生命誕生当初の海は、有機物がいくらでもある楽園でしたが、やがて有機物は食べ尽くされて、飢餓状態になった生物の中から、無機物から有機物を作り出すことが出来る生物が現れます。
27億年ほど前に出現したシアノバクテリアもその一種で、葉緑素(クロロフィル)を持ち、太陽の光を利用した光合成によって、有機物を合成し、自らの生命活動のエネルギーを確保します。その過程で放出された酸素が徐々に地球を覆っていくのです。
光合成生物が増えれば増えるほど、放出された酸素も増えて、地球環境へも激変をもたらしました。約20億年前には、海中で飽和下酸素が大気中へと放出され、その放出された酸素が紫外線のエネルギーと結びついてオゾンが発生したのです。発生したオゾンが積もりに積もって、オゾン層ができました。オゾン発生当初、オゾン層は成層圏にあったわけではありません。酸素が少ない当時は、紫外線が地上近くまで到達できるため、オゾン層は地上付近にありました。
やがて、酸素濃度が上がると同時に、紫外線の到達できる限界高度が上がり、これに伴って、オゾン層も上昇していき、約4億年前頃には、現在とかわらないオゾン層が成層圏に形成されたとされています。
オゾン層は、有害な紫外線から生命を守ることができました。こうして生物が海中から陸地へと上がる準備が整っていったのです。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。
「人間は何歳まで生きられる?」「iPS細胞で薄毛を救う?」「三毛猫はなぜメスばかり?」「黒い花は世に存在しない?」ーー生命の誕生・進化から、動物、植物、ヒトの生態、最先端の医療・地球環境、未来まで、生物学でひもとく60のナゾとフシギ!知れば知るほど面白い!
公開日:2023.05.03