~種子植物と非種子植物~
植物の多くは花を咲かせます。受粉によりできた種によって子孫を残すことができるこのような植物を種子植物といいます。しかし、シダ植物、コケ植物、藻類といった植物の仲間は、花をつけず種子もできません。では、これらはどうやって子孫を残すのでしょうか。
例えば、山でよく見かけるシダ植物は、種子ではなく胞子によって増える植物です。私たちが目にしているシダ植物は、胞子を作る胞子体です。葉の裏にある胞子嚢から地上に落ちた胞子が発芽すると前葉体へと成長します。前葉体には造精器と造卵器があり、配偶体と呼ばれます。配偶体で受精が行われ、受精卵となり、次世代の胞子体へと成長します。胞子による無性生殖と精子と卵による有性生殖が交互に繰り返されて、子孫を残しているのです。
種子植物はシダ植物から進化したものです。彼らは進化の過程で、種子によって子孫を残す方法を選択しました。それはなぜでしょうか。シダ植物では、前葉体で精子が卵細胞に泳ぎつくためには、水という媒介が必須です。つまり、子孫を残すために外的要因に大きく影響されるというリスクがありました。
種子は、その欠点を解消するものとして、生まれたとされています。種子は休眠状態に入り、発芽の好条件を待つことができるという利点があるので、またたくまに陸上の植物の主役の座を、シダ植物から奪っていきました。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生物の話』
監修:廣澤瑞子 日本文芸社刊
執筆者プロフィール
横浜生まれ。東京大学農学部農芸化学科卒業。1996年、東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員、米イリノイ大学シカゴ校およびドイツマックスプランク生物物理化学研究所の博士研究員を経て、現在は東京大学大学院農学生命科学研究科応用動物科学専攻細胞生化学研究室に助教として在籍。著書に『理科のおさらい 生物』(自由国民社)がある。
「人間は何歳まで生きられる?」「iPS細胞で薄毛を救う?」「三毛猫はなぜメスばかり?」「黒い花は世に存在しない?」ーー生命の誕生・進化から、動物、植物、ヒトの生態、最先端の医療・地球環境、未来まで、生物学でひもとく60のナゾとフシギ!知れば知るほど面白い!
公開日:2023.05.21
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