荊州の劉琮は曹操に降伏
劉備の諸葛亮への謙虚さは、襄陽名士の信頼を勝ち得た。「三顧の礼」によって、劉備が名士の建言を尊重することを明らかにしたからである。
気に入らないのが関羽と張飛。劉備は、「孔明とわしは、いわば〝水魚の交わり〞なのだ」と諭さとす。つまり、魚は水がなければ生きられない、劉備にとって孔明が水であり、また孔明にとっても劉備が水となる。互いの志を達成するには欠けてはならない存在だ、というのである。
これまでの劉備は、状況の見通し、戦略、用兵などすべて自分でおこなうしかなかった。それでは無理が生じる。そこに、その才、漢の高祖劉邦の知将張ちょう良りょうを上回り、のちに「智絶」と称される諸葛亮を得た。劉備にとって諸葛亮は、関羽、張飛に等しい「金石の交わり」なのだ。それでも腑に落ちない二人だったが、やがて曹仁、夏侯惇が攻め寄せてきたとき、諸葛亮の火攻めの軍術で見事に迎え撃った手際を見せられ、敬服することになる。
さて、劉備の幕僚には諸葛亮が加わったことで、しだいに陣容も整理され、調いつつあった。だが、時勢は刻々と変化する。。
建安十三年(207)、劉表危篤の報を得た曹操は、荊州平定のために南下する。そんな危急の際にも関わらず、お家騒動が起こった。蔡瑁の姉が劉表の後妻とあって、姉の子で次子の劉りゅう琮そうを継嗣に立てようとする。反発する長子の劉琦は身の危険を感じて、劉備に接近する、という有様で荊州は揺れていたのだ。
劉表が薨みまかると劉琮が跡を継ぎ、蔡瑁は、曹操と孝廉で同期だったため、曹操のもとへ荊州名士たちを引き連れて降る。その結果、荊州は一汗もかかずに曹操の支配地となる。いよいよ強大となり、天下統一に拍車がかかる曹操は、孫権に帰順勧告書を送りつける。これをめぐって孫権幕閣は意見を異にして紛糾するが、それは次項の話。
曹操を恐れた劉備は、すでに襄陽を撤退していたが、共に逃げるその数、十万余。劉備を慕って集まる荊州の民で膨れ上がったのだ。歩みは鈍く、日に十里(四キロ強)しか進めない。
劉備は、水軍を関羽に与えて、先んじて江陵へ向かわせた。劉備も軍事拠点の江陵を目指すが、曹操は江陵が奪われるのを嫌って、選りすぐった騎兵で急追。アッという間に長坂坡に追いついき、民を抱えて裸同然の劉備軍を思うままに殺戮するのである。
このとき、二つの奇跡が起こった。趙雲が劉備の嫡子阿斗(のちの蜀漢二代目皇帝劉禅)を抱えて曹操軍の中を駆け抜け、劉備軍の殿しんがり軍を買って出た張飛が、長坂橋で仁王立ち、大喝一声で曹操軍を退かせたのだ。かくして劉備は死中を脱け、夏口の劉琦を頼って駆け走ったのである。
『図解 三国志』はこんな人におすすめ!
・中国の古い歴史に興味がある!
・昔の人は何のために争っていたのか?
・三国時代や格言について学びなおしたい
と感じている方には大変おすすめな本です。
魏・蜀・呉、三国の興亡を描いた『三国志』には、「桃園の誓い」「三顧の礼」「出師の表」「泣いて馬謖を斬る」など心打つ名場面、また「水魚の交わり」「苦肉の策」「背水の陣」「髀肉の嘆」など名言や現代にも通じる格言も数多く登場する。また、曹操、劉備、孫権、孔明、関羽、張飛、趙雲、周瑜、司馬懿など個性豊かで魅力的な登場人物に加え、官渡の戦い、赤壁の戦い、五丈原の戦い等、歴史上重要な合戦も多い。英雄たちの激闘の系譜、名場面・名言が図解でコンパクトにすっきりわかる『三国志』の決定版!
シリーズ累計250万部を突破した「図解シリーズ」の読みやすさ
図解シリーズは、右側に文章、左側に図解で解説という形で構成されているので、本が苦手な人にも理解しやすい内容です。
図解シリーズには、健康・実用だけではなく大人の学びなおしにピッタリな教養のテーマも満載。さくっと読めてしまうのに、しっかりとした専門家の知識を身につけることができるのが最大の魅力です!
気になる中身を少しだけご紹介!中国では、「革命」によって新たな王朝に禅譲されるのが約束事
『三国志』は「紀伝体」で書かれました。帝の記録「本紀(略して紀)、それ以外の人物の記録「列伝(略して伝)」で構成される歴史書です。陳寿は『三国志』を書くに際してあれこれ惨憺したらしい。魏の曹操(155~220)没後、息子の曹丕(187~226)が皇帝を名乗り、であればと蜀の劉備(161~223)、次いで呉の孫権(182~252)も皇帝を名乗った。
でも、三国に帝(皇帝)がいるというのは古来の中国ではあってはならないこと。天が命じた天子に地上を治めさせるので、天子は一人でなければならなかった。しかし、その天子が徳を失えば、徳のある天子に禅譲することになります。だから陳寿は、後漢の献帝(181~234)から禅譲(実際は簒奪)されたとする魏を正統とすることによって、魏から禅譲(これも簒奪)されたとする西晋を正統とせざるを得ない。
ほんとうは後漢の正統を継いでいるのは、漢王室の末裔とされる劉備が興した蜀と思っていても、陳寿はそうは書けない。故国蜀の滅亡で晋に職を求め、史官として三国の歴史を書くために仕えている身としては、晋朝廷から覚えめでたくあらねばならない、きっとそう悩んだ。
結局、陳寿は「魏書」に「本紀」を置かざるを得ず、「武帝紀(曹操)」「文帝紀(曹丕)」から最後の皇帝「元帝紀(曹奐)」まで著しました。じゃあ、劉備や孫権をどう扱ったか?「蜀書」に「先主伝」を立て、劉備を“先主”と呼ぶ一方、「呉書」の「呉主伝」では孫権は一貫して“権”。「列伝」では当該人物名を生前名の諱で呼ぶのが原則なのに、劉備に関してはその慣例を無視。まさに陳寿は蜀びいきなんですね。
★三国志演義の物語
★赤壁の戦いの真実とは?
★三国志の始まりとは
★知っておきたい軍事制度とは
などなど気になるタイトルが目白押し!
『三国志』には、心打つ名言や現代にも通じる格言が多くあります。曹操、劉備、孫権、孔明、関羽、張飛、趙雲、など魅力的な登場人物に加え、官渡の戦い、赤壁の戦い、五丈原の戦い等、名場面を図解でわかりやすく解説しているので「三国志」の学び直しに是非読んでいただければ幸いです。
【書誌情報】
『図解 眠れなくなるほど面白い 三国志』
渡邉義浩 監/澄田夢久 著
魏・蜀・呉、三国の興亡を描いた『三国志』には、「桃園の誓い」「三顧の礼」「出師の表」「泣いて馬謖を斬る」など心打つ名場面や「水魚の交わり」「苦肉の策」「背水の陣」など名言や現代にも通じる格言も数多く登場する。曹操、劉備、孫権、孔明、関羽、張飛、趙雲、周瑜、司馬懿など個性豊かで魅力的な登場人物に加え、官渡の戦い、赤壁の戦い、五丈原の戦い等、歴史上重要な合戦も多い。英雄たちの激闘の系譜、名場面・名言が図解でコンパクトにすっきりわかる『三国志』の決定版!
公開日:2023.02.24