ドローンのプロペラ回転
「ドローン」の名前の由来を知っていますか? 由来には2説あります。1つは雄蜂の羽音「ブーン」という音。もう1つは第二次世界大戦時のイギリス軍射撃訓練用標的飛行機「クイーン・ビー」からきているという説。クイーン・ビーは女王蜂の意。英語の「Drone」は雄蜂の意味があるそうですから、どちらにしろ蜂の羽音からの連想のようです。
そんな蜂の羽音に似た音は、プロペラの回転で発生します。ドローンは、プロペラで起こした風を下に吹き付け、その反動力で自重を支えて飛びます。ヘリコプターと同じです。プロペラの推進効率η(イータ)は、プロペラで起こす風の速度をv、ドローンの(上昇)速度をvdとすると、次のように表されます。
これより、推進効率ηを高くするには、プロペラでつくる風の速度vを、できるだけ小さくしなければなりません。たとえば、プロペラで押し出す空気流量をmとすると、次式で与えられる推進力Tp=mvは小さくなって、そのぶんだけ空気流量mを増やす必要が出てきます。プロペラの半径をrとすると、プロペラの面積Aはπr2ですから、空気流量はρAv=πr2vとなります。すなわち、プロペラ半径の大きなものを選ぶ必要があるわけです。吹き出し速度vを下げるには、プロペラ回転数を下げればいいので、なるべく径の大きなプロペラを、ゆっくり回転させることが重要となります。
4つのプロペラを持つドローンで考えてみましょう。プロペラの回転方向は、その反力で機体が自転しないように設定されます。プロペラの推力(回転数で制御)を同時に大きくしたり小さくしたりすると上昇・下降ができます。ドローン重量と釣り合う推力であれば、その場で静止させることもできます。前進は、4つの推力バランスを保ったまま後ろの2つの推力を上げ、前2つの推力を下げることで前方に機体を傾けます(ピッチング回転)。後進はその逆です。
左に並進移動するときは、推力バランスを保ったまま右2つのプロペラの推力を上げて左方向に傾け(ローリング回転)、右方向への移動ではその逆に傾けます。ヨー回転(ヨーイング回転)は、推力バランスを保ったまま同じ回転方向の2つのプロペラの回転数を上げ、逆方向回転のプロペラの回転数を下げます。そうすることで、プロペラ回転の反トルクを使い、その場でヨー回転させられます。たとえば、上から見た状態で半時計方向(CCW)にヨー回転させたければ、時計方向回転(CW)のプロペラ回転数を上げることでコントロールできるわけです。ドローンにはいろいろな使い方がありますが、高所から俯瞰して自然の雄大さを写す映像は感動すら呼ぶものですね。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修
物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!
公開日:2023.06.19